自分で決める

NHKの番組で「プロフェッショナル」という番組があります。その中で紹介されていましたが、旅館経営再建のプロと呼ばれる人がいます。

この人の特徴として、現場スタッフに経営会議に参加していただき、重要な項目も現場で決めてもらうという姿勢があります。
例えば、宿泊料金や旅館のターゲット(主なお客様層)などについて従業員に決めてもらいます。この人「どうしますか?」というのが口癖です。

もちろん、それまでに旅館経営に関する周到な準備を行い、現場の人たちが意思決定しやすいようにデータは整理しておき、会議に臨むくらいの事はします。旅館再生のプロとい言われるその人は、実際にはファシリテーター(学習の促進者)に徹するという立場で旅館の再生を行っているわけです。

物事を学ぶ時、<自分の意思で行動した結果どうなったかを体験する>ことが極めて重要です。主体的に行動したその結果は<自らの行動の結果=自らの成果>として学習することができます。言われてやった事は身に付きにくく、自ら動いて学んだ事は応用が効きます。

児童行動療育センターのスタッフの報告を読ませていただきました。
その中で、親や教師の人たちに、障害がある子どもの支援内容や支援方法を決定してもらうことが、良好な支援を家庭や学校でも継続するために重要である旨の記述がありました。ああ、児童療育のような専門的分野の療育方法の学習事情も、ビジネスの領域における人材育成も同じ事が底流に流れているのだなと思った次第です。

親向け合同研修会:自立支援法の見直しと家族会の対応

11月7日の合同研修会の資料

■前回のミーティングからの報告
・安全・安心委員会スタート
・接遇委員会スタート
・給食委員会→アドムを参考にするなど改善がみられる

ここから本題・・・

1 障害者自立支援法が見直されます

■厚生労働省の発表
1 法律上も負担能力に応じた負担が原則であることを明確化。
2 グループホーム・ケアホーム入居者への支援を創設(居住に要する費用の助成)。
3 発達障害者が障害者の範囲に含まれることを法律上明示する。
4 総合的な相談支援センター(基幹相談支援センター)を市町村に設置。
5 支給決定の前にサービス等利用計画案を作成し、支給決定の参考とする。
6 障害児施設(通所・入所)について一元化。
7 「放課後等デイサービス」を創設。
8 保育所等を訪問し、専門的な支援を行うため、「保育所等訪問支援」を創設する。
9 成年後見制度利用支援事業の必須事業化
10 事業者における法令遵守のための業務管理体制の整備。

■グループホーム利用促進
○公営住宅を含めた公的賃貸住宅が的確に供給されるようにする
○住宅のバリアフリー化を促進する
○公的な家賃債務保証制度
○障害に基づく入居拒否については法的対処が可能に
○グループホーム等の建設に際し、地域住民との間において生ずるトラブルへの回避

2 名東福祉会が今後とるべき方向性は?

■施設ケアの方向性
・地域の方々から、個人個人の意思に基づいた寄付をいただけるよう努力する→必要とされる法人に
・グループホーム運営形態(ニーズ、資本、供給量、規模、職員数、利用料)について検討
・新しい形態の就労支援へのチャレンジ
・芸術・分化活動の普及
・介護の生産性向上
・行動療育事業の強化
・委員会(質の改善、ケア内容の妥当性、説明技術)
・自己決定支援
・生活スキルの育成と強化
・家族成年後見人の横領事件が社会問題化する→成年後見人制度について知る
・利用者にとって快適で有意義な環境の整備
・「はたらく」「よろこんで」を重視

■施設間連携
・個々の施設の特徴に合わせて自分たちで目標を決める
・施設間のWIN/WINを大切にする
・施設間で相乗効果を発揮する

■研修と研鑽
・自己決定を支援する組織的な風土・分化
・委員会
安心・安全委員会
給食委員会
接遇委員会
・内部監査機能の強化

■具体的事業目標
・名東区または天白区にグループホームを設置したい
Qその運営方法は?

・名古屋市に行動療育センターを設置したい
Q場所・方法

・「はたらく」「よろこんで」を大切にした就労支援
Q事業内容は?

3 家族は、名東福祉会をどのように支えるか

■一人年間3000円以上の寄付をお願いします
・税と社会保障の一体改革で寄付金の控除に関する通知→必要とされている法人か?
・施設利用者以外にもお願いする

■施設を超えた家族の連帯
・家族も、自主的に委員会や勉強会を開き、研鑽に努めるべき
・横断的行事
・合同家族会
■権利の主張からポジティブな支援活動へ
・権利擁護は負の強化 施設にとっては心地よくはない
・○○せざるを得ない→喜んで○○したい
・障害者を雇用しないと罰せられる→喜んで障害がある人を雇用したい
■怒られるからやる→喜ばれるからやる
・施設ケアを育てるのは家族会の役割
・20年間の企業活動を通して感じた事をひとことでいえば喜んで働く組織が発展する
「お客様に喜ばれる仕事ができて幸せだ」

だめな施設は・・・
・(職員)いくらやっても家族には感謝されない→契約内容の見直し
・(家族)何かがあると退所や損害賠償を求められる→弁護士、成年後見人などで理論武装
負の強化では、多様な行動は現れず、組織が分断され、次第に組織は弱くなっていく
反対に「喜んでやります」と口に出すだけで、不思議に行動が変わる

■家族自身が法人に対する貢献方法を考える
・ご自身で何がやれるのかを考えましょう

親亡き後、知的障害者の成年後見人について考える

親亡き後を考えるという勉強会が延期されました。今回は、資料として用意しておいたものを書き込んでおきます。

テーマ:親亡き後、知的障害者の成年後見人について考える

1 成年後見人を決めるだけでは心配は消えない
2 遺産がある場合には、相続後の財産の有効利用を考えておく事
3 法的に権利を護る事よりも支えてくれる人に感謝することが大切

1 成年後見人を決めるだけでは心配は消えない

■成年後見人はもともとは・・・

・財産がある高齢者が、
・自分がまだ判断能力があるうちに、
・自分に代わって、
財産管理、医療看護の契約を取り行ってくれる事を委任したい

典型例 家族に観てもらえない一人暮らしの認知症高齢者→その後、知的障害者にも広がった
事業者のすそ野が広がった高齢者介護ではますます重要な課題

Q 知的障害者ではどうか?その理由は?

■成年後見人の実態

「子・兄弟姉妹・配偶者・親・その他親族」が後見人等に選任されたものが全体の約83%
第三者が法定後見人に選任された件数は、全体の約17%
・弁護士952 件
・司法書士999 件
・社会福祉士313 件
今後、専門家、NPO、市民ネットワークが増える可能性あり

Q その時、施設との関係はどうなるのか?

■知的障害者成年後見人の仕事

1財産管理
2自己決定支援
◎自己決定支援だけなら施設職員の役割と変わらない

身上監護(生活・療養看護)
①被後見人の介護契約・施設入所契約・医療契約等についての代理権
②被後見人の生活のために必要な費用を、被後見人の財産から計画的に支出する業務
介護労働や家事援助は後見人業務の対象外→家族後見人の場合、事実上の無報酬。

Q 家族以外の人が成年後見人を受けることは、当人にどんな利益があるのか?

■ほとんどの知的障害者には財産がない

高齢者との決定的違う点であるが、相続によって財産をもつかもしれない
→ただし成年後見人が、遺産相続の当事者となる場合には貢献人資格を一時的に失う
年金を貯めてきた人は数百万円を所有しているかもしれない

しかも、知的障害者の相続権は家庭裁判所によってきっちり守られている
財産分与について、親は希望を伝えておく必要がある

■成年後見人の報酬は?

法廷成年後見人 報酬は未公開だが、推定で月額5000円~50000円
家族成年後見人の場合はほとんどが無報酬
成年後見人に補助金は出ない
財源は本人の財産
※実際には年金の額が少ないので報酬は支払えないケースがほとんど
※被後見人に使われる経費と後見人報酬があいまい

◎本人に財産がない場合は、成年後見人事務にかかる経費を年金から支払う構造
◎後見人が被後見人の財産を横領するケースが時折ニュースになる
成年後見人監督人が必要

Q これでいいのか?

2 親亡き後

■家族の役割分担

日ごろから家族の役割分担を示唆しておく事が重要
(本人に必ず遺産が分割される)
遺産の有効利用の方法を考えておく
例 土地の場合→アパート(グループホーム)経営?
※まだ権利擁護体制ができていないため、研究の必要がある

■権利を明確にするだけでは人を護ることはできない

長い人生を乗り切るには支援ネットワークが必要
成年後見人の選定をしておく

Q ただし、現在の障害者政策は権利付与による社会変革

■子は親の鏡

親がやっている安易な事を子どもは真似る
親は年金を本人のために残すという習慣を作る
権利を護る事よりも感謝することが大切
我欲を抑えた行動をとる
・他者を優先
・職員・ボランティアへの感謝
・家族への感謝
・地域への感謝
・私欲を抑える(わが子よりも他の人を先に)
・お互いを支えあう家族会活動

○○せざるを得ない→喜んで○○したい
負の強化ではなく、正の強化で社会を変える

■家族会の役割→支援ネットワークをつくる

今後、障害者施設の経営が好転する機会は少ない
本来は、知的障害者の権利擁護や成年後見を必要としない社会が望ましい
そのために、施設を超えた連帯が必要→家族の結束と連帯で社会を動かす
施設は成年後見を必要としない安心・安全の施設サービスを提供すべき
職員はいい仕事をして本人、家族、地域に喜んでいただく
職員も家族も、できるだけ地域の他法人と連携を深める
家族は地域、職員、そして本人に感謝する

ともにはたらく

日本人ほど相手の事を考える民族は他にいないといわれています。
「はたらく」という言葉は日本語本来の意味は「はた」と「らく」すなわち周りの人を楽しませるという意味だそうです。

労働はもともとは英語のlaborから来ています。さらにその英語のlaborはラテン語のlaboro(努力する)ということばから来ているそうで、苦しみながら何かを成し遂げるという意味が強い言葉だと思います。ちょっと眉間にしわがよりそうな言葉です。
一方、日本語の本来の「はたらく」という言葉は周りの人を楽しませる事が第一。とても明るく、誰しも思わず笑顔になってしまう言葉なのだと思います。

「就労支援」・・・これは今の障害者福祉のキーワードです。障害者就労支援という言葉を漢字の分解をして意味を考えれば、障害がある人を、苦労をして稼ぐ場に就く事を支え援助するという事になります。この考え方にどこか私たち日本人が大切にしてきたものが抜け落ちているような気がしてなりません。

「ともにはたらく」
この言葉を本来の意味から考えれば、私たち施設職員の使命は、職員や家族、ボランティアが障害がある人とともに、地域の人たちを楽しませる活動に従事することだと思います。
工賃や売上は、確かに大切な指標ではありますが、こうした活動の本質はなかなか数値に表れてきません。会計報告とはそうしたものだからです。でも、確かに、名東福祉会の各施設の現場では「ともに楽しむ事」を大切にしてきました。

今は円高・デフレで利用者が作ったものが売れない時代です。でも「周囲の人を楽しませる事」が本来の日本の就労支援の在り方のはずです。「楽しさ」をキーワードに、私たちは自信を持って日々の施設活動を続ける事が大切なのだと思います。

エピキュリアン(快楽主義者)

古代ギリシャ時代にエピクロスという哲人がいました。あたりまえの幸せを求めることが人生の目的であると教えた人です。

健康第一。贅沢ではないいい食事を食べて、友がいて、食べていくために必要な仕事があり、簡素な衣服があって住まいがあれば良いと。平静な心が大事とも。権力闘争とは無縁の世界。まるで「なんでもないような事が幸せだったと思う」という歌のような教えです。日本のような穏やかな自然の国にはぴったりの生き方だと思います。

エピクロスは「庭園」と呼ばれる「楽園」で弟子の人たちと<自給自足生活>をしたそうです。エピクロスの事を調べていて、私は思わず現代の施設の生活を思い浮かべました。福祉施設が提供すべき生活も、古代ギリシャ時代にエピクロスが求めたものと本質的に同じかもしれません。

名東福祉会では創設以来「楽しい事」を大切にしています。今日のプログラムは楽しかったのか、健康的であったのか、職員も利用者も楽しく作業に取り組めたのか、友と楽しい時間を過ごせたか、外部内部の人を問わずいい笑顔とどれだけ出会ったのかなどなど。反対に、苦痛や恐怖はなかったか、ねたみはなかったか、喧嘩はなかったかなど。そんな事を反省材料として会議を行います。エピクロスについてはあまり知りませんでしたが、元来、福祉が求めるべきものはそうしたものかもしれません。

エピクロスの「庭園」はずいぶん楽しそうであったけれども、あまり外部の人との交流がなかったらしく「閉鎖的」とか「快楽主義者」と批判もされたそうです。それは誤解だと思いますが。今でもエピキュリアン(快楽主義者!)という悪口言葉が残っているくらいこの人は理解されていません。

私たちも、あたりまえの幸せを求める事が大切であることをいつも確認、地域の人に説明を怠らないようにしたいものです。奈々枝会長の命日の今日、そんな考えが想い浮かびました。

ゲーテの警告

適菜収の「ゲーテの警告 日本を滅ぼす『B層』の正体」(講談社)を読みました。小気味良い論評で、ゲーテの言葉を随所にちりばめ、日本の政治、経済、文化を根こそぎだめにしている元凶について鋭く説明しています。

B層は二流の意味。具体的には「民主党のマニフェストには騙された」といっているような権威・マスメディアを根拠もなく信じる人たちです。権威が大好きな一方で、権威をけなすのも大好きな人たちです。また理念やイデオロギーが大好きで、何かと「民主主義」を前面に出してきます。三権分立や官僚機構など、民主主義のリスクを回避するための人類の知恵を嫌います。集団の代表や役員を選ぶ時も理性的で知的な人を代表として送り、その人に「託す」事をしたがらず、くじ引きや順番制にしたがる傾向があります。

ゲーテは自由・平等・博愛を掲げたフランス革命については吐き気しか催さなかったそうです。ジャコバン派のロベスピエールが中心となってフランス革命は進みましたが、実態は野蛮で凄惨な恐怖政治。改革や革命好きの今の日本も怖いと思います。

内容については実際に読んでいただくとして、ひとこと。B層は手のわざがないからA層(一流の人)から与えられた理論、イデオロギーを信仰します。ゲーテは「理念をもっと少なくして、実践をもっと重んじなければならない」といったとか。障害者福祉についていえば、支援者としての手技をみがく事が現状の問題を解決する唯一の道です。そしてその手技(行動)は、実際に生活に寄り添ったものからしか受け継ぐ事ができません。地域福祉の理念や理論が先にあるわけではないのです。

暑い夏が続きますが、本書は一服の清涼剤となりました。

レジデンス日進の「協力金」の使い道について

レジデンス日進は完全個室でなる10人(ショートステイ用に予備室が7室ある)ユニットが4つ集まったユニットケアを行っています。各ユニットには食堂、居間、トイレ、風呂を備えています。桐材と腰壁にはふんだんに桐を使い、珪藻土を厚く塗った天井と壁、外断熱の役割を果たす煉瓦とあいまって冬暖かく、夏涼しい快適な空間となっています。それだけではなく、利用者や家族が全体が集まることができる食堂や地域の人々との交流を目的としたホールも備えています。仕事をする空間も居室とは別に施設内外に備えていて、職住分離ができている上に、職住が離れすぎてもいない便利な住まいとなっています。

各ユニットはそれぞれ完全に分離しているため、実質的にグループホームが4つ集まった集合グループホームといっていいと思います。日本でもおそらく屈指の快適さを誇ります。もちろんいろいろな問題点はありますが、通常の入所施設と比べ進んだ「住まい」だと思います。ただ、現状では人件費が多くかかることは否めません。運営は非常に厳しいものがあります。

2010年度の名東福祉会の決算報告書からレジデンス日進の数字を拾います。レジデンス日進の総収入は181,678千円。一方、総支出が179,089千円となっていて、一見黒字ですが、よくみると、利用者の家族から、運営協力金(寄付金)を12,254千円いただいています。寄付金を除く収入は169,424千円で、もし協力金をいただけなければ、年間9,665千円の赤字になっていたわけです。支出の内訳は、
1 人件費 132,629千円
2 事務費 18,883千円
3 事業費  26,564千円
4 利息支払 1,011千円
でした。人件費が74%! 一般企業ならとっくに倒産。社会福祉法人の施設でも50%~60%が適正ですから、レジデンス日進の人件費の高さは極めて問題といえます。ただ、通常の施設よりも人員が多いのはユニットケアだからです。職員は24時間体制で勤務しなければなりません。職員数は所長を含め42名配置されていて、管理職や社会保険も含めた人件費を単純に割り出すとひとりあたり3,157千円となります。安いです。直接処遇職員だけならばもっと安くなります。

これ以上人件費を安くすることは社会通念上問題がありますから、収入を増やすしかありません。支援費の収入を増やすためには、定員の増員しか手がありません。ただ、そうすれば個室ではなくなり、グループホームとはいえない、いまや解体を余儀なくされているただの入所施設になります。

協力金の使い道は赤字の解消と将来に備えた積立です。現在、文字通り利用者のご家族のご協力によって運営がなりたっているわけです。いただいた12,254千円のうち、9,665千円が赤字を埋めるために使用され、残り2,589千円が将来の修繕のため、施設に積み立てられています。

これまでの文章と数字を見て、懸命な方はお気づきだと思いますが、もしレジデンス日進がそのままグループホームであれば利用者は協力金ではなく「家賃」を払うことになります。そうなると協力金というようなあいまいな収入ではなく、契約に基づく家賃収入として計上されますから、なんら赤字ではなくなります。実際のところ、レジデンス日進はグループホームと変わりません。むしろ通常のグループホームよりも高機能な設備を持っている未来のグループホームです。また協力金を払わなければ、名東福祉会の他のグループホームとの格差も生じてしまいます。協力金には積極的に協力する姿勢が家族としては絶対に必要であると思います。(これは理事長としてではなく両者家族の立場からの発言ですが)

将来、レジデンス日進はグループホームに転換する予定です。その際は「協力金」の名称はなくなり普通の「家賃」になるはずです。それよりも、国は今すぐこのようにがんばっている「施設」に対して支援費単価を上げる事が必要だと思います。地域福祉の促進のためのインセンティブになると思うのですがいかがでしょうか。

参議院内閣委員会での障害者基本法に関する質問

平成23年7月28日、参議院内閣委員会で自由民主党の衛藤晟一氏が質問を行っています。
冒頭、あさみどりの島崎春樹先生(名古屋のある有名な福祉をやっている方とは島崎先生の事です)との対談が紹介され、障害者福祉が1981年の国際障害者年以来、「ともに生きる社会」を目指してきた事を指摘されています。

質問の趣旨は
1 これまで障害者問題は議員立法で法律を作ってきた(いいかえれば超党派で立法してきた)が今回は政府として法律が提出された。
2 社会資源が大幅に不足している状況の中でいきなり人権条約が出てきたのは違和感がある。
3 身体障害に重点が置かれすぎていて、知的障害、発達障害、精神障害については弱いのではないか。
という三点です。

人権を擁護する事は大切です。世界的な潮流でもあります。でも、現在の日本の障害者福祉は、重症心身の施設が極端に不足しますし、精神障害は福祉施設で受け入れる体制が極めて不十分なまま請け負わされています。さらに、発達障害の療育についてはまだ方法論が確立していません。そのような状況の中で、真摯に取り組んでいる福祉サービスの事業者に対して、人権侵害のチェックだけを厳しくしていく事は、福祉サービスの仕事をより困難にさせたり、新しいサービスを創造していく事にちゅうちょしたりするような効果があるように思えてなりません。人権が独り歩きしていけば、「とも生きる」事について潜在的に憶病になり、ひいては障害者と健常者がばらばらにされてしまうということにもつながりかねません。

もちろん「ともに暮らす社会」は簡単に実現できる理念ではありません。目を覆うような人権侵害の事例も後を絶たないという事もあります。考えてみれば、日本の政治は、平成に入って徹底的に「家族」や「地域」が壊されてきました。状況は難しいと思います。でも、障害者基本法は理念法。私たち日本人が日本人らしく「和(なごみ)」の世界で支えあう事ができるための法律は何かを議員の方々には議論していだたきたいと思う次第です。

ホームページの冒頭に、衛藤晟一氏の質問ビデオをアップしておきます。

決算報告

決算報告
2011年5月25日、141回理事会において、平成22年度名東福祉会決算が承認されました。

事業活動の収入は538,380,739円(前年度497,005,487円)となり8.3%増加しました。増加の要因は主に寄付金です。名東福祉会では平成23年度中のケアホームの建設を予定しており、この建設資金に対して35,000,000円の寄付がありました。各施設に対する寄付も含めた寄付金総額は60,143,300円(前年度22,736,600円)で264.5%の増加となりました。

昨年度は自立支援法の改訂があり、施設利用の自己負担分は29,736,720円(前年度36,092,733円)で17.6%減少しました。それを補う形で補助金が増加しましたが、寄付金を除く収入としては478,237,439円(前年度474,268,887円)で0.8%増の微増に留まりました。利用者の自己負担は主に給食費の負担分でした。
一方、事業活動支出は474,747,616円(前年度462,234,621円)で2.7%増加しています。

その結果、収支の差額は63,633,123円(前年度34,770,866円)となりました。建物の減価償却費があるため、寄付金を除く事業収支でみると3,489,823円(前年度12,034,266円)と繰越金は減少(71.0%減少)しています。

事業支出のうち最大の項目は人件費です。平成23年4月1日現在の常勤換算前の職員数は嘱託医を除き89名です。この職員で213名の障害がある方々の介護を行っています。平成23年度人件費は法人全体で336,960,042円(前年度325,699,394円)で3.5%の増加となっています。一人当たりの単純人件費は3,786,000円ですから、極めて低い水準にとどまっている事は否めません。

寄付金のうち、施設建設資金として寄付があった42,586,402円をケアホーム建設のための預金に積立ました。

今年は年度がわりのタイミングで3.11の大震災があり、多くの国民が被災されました。特に、高齢者の方や障害がある方の中で犠牲になられた方が多かったといいます。今後、名東福祉会としては、いつか起こる東南海地震に備え、建物の強化や備蓄、防災訓練など災害対策を強化する必要性が強く認識されました。理事会においても今後の災害の準備の必要性が指摘されました。

来年度は新体系への移行のタイムリミットを迎えます。利用者のニーズを分析し、より安定的でニーズに沿った質の高い運営ができる体制を目指し、効率的な経営を目指して事業を再編していく必要があると思います。

詳しい決算内容については事業報告書の形で会員の方に配布いたします。また事業報告書の印刷前であっても財務諸表の詳細をお求めの方は法人本部にお申し込みください。コピーを配布させていただきます。

戦略の見直し

3.11以降、「地域福祉戦略」を大幅に見直す必要が出てきたのではないかと思います。

一般に、戦略を考えるときには、国際要因、国内要因、時代精神の3つについて考えなければならない、といわれています。
国際的には原子力によるエネルギー政策がとん挫したため、今後、経済が停滞し、化石燃料が高騰し、輸送コストが上昇し食料品をはじめとするインフレが進むだろうと思います。国内的にみても、原子力発電による30%のエネルギーの代替方法に関する議論が始まったとはいえ、実際に効力を発揮するのはまだまだ先の話です。これから日本経済が復活するためには数多くの障壁を乗り越えていかなければなりません。

福祉は単独では産業として成り立ちません。物資はもちろんのこと、国内の様々なインフラの整備や移動手段、情報手段、輸送手段など経済活動の「余禄」があって初めて良質な福祉システムが実現できます。まずは日本の復興がなされなければ、障害者福祉の復興もあり得ません。

おそらく、多くの困難があっても私たちの国である日本は必ず復活すると思います。これまでも何度も何度も国難を乗り越えてきた民族であるからです。

問題は時代精神の変化です。
これまでわが国はの福祉は、「時代精神」として分散型のケアを目指してきました。介護の場が一か所に集中していれば何か悪いことをしているかのような雰囲気がありました。ケアの場所が単に分散していることを地域福祉と言い切る専門家もいたりしました。ところが、3.11によって分散型の福祉の脆弱さが明らかになってしまいます。今回亡くなられた方の大半があまり動けないお年寄りや障害がある方だった事は極めて重いと思います。
災害時の救出と避難生活の維持を考えれば、現実的な障害者福祉ケアの在り方としては
・施設を安全な場に設置する
・地震があってもびくともしない頑丈な建物を建てる
・災害に備えて十分な備蓄をする
という事が大切だと思います。支援者である職員の安全も確保しなければ誰がどのように救助するのかさえわからないという事が今回の震災で明らかになりました。
もともと安全と安心を確保することと地域福祉は対立する概念ではありません。「本人の意思を尊重した質の高い安心生活」こそが福祉の目指す方向なのだと思います。それを実現するための戦略を「地域福祉」とするならば、時代精神に合わせてその戦略そのものを見直し、より適切な標語に切り替えていくべきではないだろうかとさえ思います。

東南海地震の発生確率は今後30年の間に70%。しかも今回の震災でその発生確率は大きくなっているといいます。その備えこそ急務です。

名東福祉会後援会の意義

名東福祉会の後援会は昭和57年の設立の直後にスタートしています。年会費は3000円。施設の活動を広く地域に広報するために機関誌WORKSを毎月発行していました。

最初は故奈々枝会長の知人を中心に、無料でWORKSを送付していたのですが、内容を読んだ多くの読者から
「こういう障害者の問題を教えていただいてなおかつ郵送費で負担をかけるのは申し訳ない。購読料を払わせてください。」
というありがたい声をいただきました。そこで実費を助けていただくという意味合いで賛助会費の設定が行われたのが後援会発足のきっかけでした。

名東福祉会の後援会の設立趣旨は今でも生きています。その目的は、地域の人たちや地域外の志を同じくした人たちに、名東福祉会の活動をご報告する事にあります。またWORKSの送付を通じていろいろな授産製品が地域に紹介され、製品の販売を後押しするという販売促進資料の役割も果たしたと思います。

現在、名東福祉会の後援会は「施設利用者の会費」と「一般の人たちの会費」の2本立てとなっています。
これは施設を利用していただいている方が少しでも名東福祉会の運営に役立てばと、自主的に一般の人よりも多い会費を設定していただいたことがきっかけでした。もちろんたいへんありがたい話ではありますが、自立支援法が施行された今、施設利用者については支援費報酬の有形無形の自己負担があります。この際、後援会の設立の趣旨に立ち返り、施設利用者の後援会費徴収は廃止すべきだと思います。

もちろん利用者の生活の質の向上や施設の修繕、新しい施設建設に備えて寄付が必要な事はいうまでもありません。ただ、社会福祉法人への寄付は税制上の優遇措置もありますから、寄付は名東福祉会へ直接寄付する事が望ましいと思います。名東福祉会は寄付者ひとりひとりの意向に従い寄付金を使う義務があり、費用弁済した過程を財務諸表の形で公表しています。寄付金は収受の過程から会計への受け入れ、費用の執行に至るまで公的機関の監査を受けます。社会福祉法人への寄付行為によって寄付者の税金が控除される以上、公的機関から受払の厳密さが求められるのは当然です。

障害がある方の生活の質の向上は、地域の人々との協働なしには成り立ちません。後援会は地域との大きな窓口であり、地域福祉を推進するエンジンです。ここは本来の後援会設立の趣旨に従い後援会活動を見直していくべきでしょう。

第一に、研鑽の場として機能する事です。施設利用者の家族もできる限り参加する形で地域の人々が交流し、ともに学ぶ場に成長していくきっかけとしたいものです。

第二に広報機能の強化です。現在ではインターネットがあります。今でもWORKSのような印刷物が必要な事はいうまでもありませんが、名東福祉会のホームページについても今後、より機能を強化し、授産製品の注文や配送機能を搭載したり、読者との双方向のコミュニケーションを強めるなど、より見やすく楽しいHPに変えていく必要があります。

第三に、後援会が持つ事業的な要素の強化です。現在でもバザーを実施して収益を得ています。これらの活動をより強化するための企画室として役割を果たしていく事が求められていると思います。

障害者福祉はマラソンランナーです。地味で具体的な行動を通じてしか地域との交流は成り立ちません。急いではだめですし、ゴールを目指した粘り強いがんばりが必要です。

経営資源

社会福祉、とりわけ障害者福祉にとって最も重要な資源は、人、モノ、カネのうちどれでしょう。みなさんはこのうちどれを選べと言われても、どれもしっくりしないのではないでしょうか。

私は、実践経験=ノウハウだと思います。もっといえば、ひとりひとりの生活状況において、人と場に即した適切な支援プログラムを選択し提供するノウハウ(暗黙知と形式知)こそが社会福祉の組織にとって最も重要な経営資源だと思います。

障害がある人には、それぞれ障害を克服してきた歴史があります。また支援者の側にもそれまでに支援が実った歴史、失敗した歴史、いいかえれば学習経験があります。ノウハウは障害がある人と、支援を提供する組織や地域の学習経験の集積とも言い換える事ができます。従って、生活相談にしても、現場経験のない理論だけの相談支援では喜んでもらえる事は難しいかもしれません。

ただ、ノウハウはそれまでに経験した時間や人間の数ではないと思います。歴史の長い法人や規模の大きな法人が有利とは限りません。問題はその質です。たったひとりの支援経験や、短い支援経験でも、それが地域の住民の課題に対する姿勢や社会福祉制度を変えるだけのパワーを持つ事もあり得ます。

名東福祉会の実践においては、これまでに私たちが問題を克服してきた経験を振り返って尊重し、ノウハウを共有化し、持っているものはそれを伝達し、若い人はそこに新たなアイディアを加えてノウハウを常に改良していく事が肝要と思います。

自助 互助 絆

奈々枝会長の思い出話のひとつに、終戦直後の大阪における武田薬品工業での研究助手生活があります。研究助手と言っても、看護師として、ただ言われるままに薬品の合成や実験のお手伝いをする存在だったようです。

そんな見習い生活ではあっても、若い時の体験は恐ろしいもので、その後、終生会長の生き方に影響を与えたのではないかと思います。苦しい局面にでくわすと、
「成せばなる、なさねばならぬ何事も・・・」
と言ったり、また何事かを人様に教えなければならないときは
「してみせて言って聞かせてさせてみる」
と実践してみたり。

これは明らかに武田信玄の言葉。武田家の当主を戴く当時の武田薬品の中枢部の仕事場では、社員が互いを励まし、後進に技術を伝える度に普通に話されていた言葉だったと思います。武田信玄の言葉は上杉鷹山に引用され、新渡戸稲造の「武士道」によって米国大統領のルーズベルトの行動にも影響を与えたとか。

武田の強みは絆。わが郷土の英傑信長に敗れはしましたが、武田武士の絆の強さや自助や互助の精神は日本の武士道の原型ともいえます。

今、私たち日本人は大震災、津波、原発の3つの危機に見舞われました。それでも被災された人々や救助に向かう人々は、雄々しく自助、互助の精神、地域の絆の強さを発揮して再び立ち上がろうとしています。それが世界から称賛を得ています。

名東福祉会も、自助、互助の精神を発揮し、地域との<絆>を深め、会長の遺訓に応える時だと思います。

東日本大震災

戦後最大の震災がありました。M9.0は世界でも4番目の大きさだったそうです。

救援が始まりましたが、被災地の方は依然として厳しい状況に置かれています。また福島第一原子力発電所の事故はまだ安定した状態にはなっていません。一刻も早く復興体制が整い、安全が確保される事を願うばかりです。

今日(16日)の段階で死者・行方不明者は11000人を超えています。また避難生活を強いられている人は45万人にも上るといいます。その中でこれまでに自衛隊や消防の方々が救助した人の数は2万5千人以上となったそうです。危険を顧みず救助に向かう人たちの存在は、ほんとうにありがたく思います。

日ごろあまり見ないテレビですが、現地からの映像を見ますと、被災地の方が、少ない物資を分け合い、お年寄りや子供たちをいたわり、助け合いながら生きている姿を見ますと同じ日本人として深い感銘を受けます。横浜や東京では昨日より計画停電が始まりましたが、みなさん「東北の人たちを助けるため」と冷静に対応しています。

愛知の名東福祉会としても、自分たちが今できる事は何か、これからすべき事は何かを真剣に考えたいと思います。こうした時は、会の団結を深め、内部の改善に努めるとともに、これから起こってくるだろう様々な問題に、ひとつひとつ丁寧に対処していきたいと思います。会員の皆様方にはご協力をお願いいたします。

ネットワーク型

知的障害者の人たちの支援を本人の夢に沿う形で行うならば、網の目のように張り巡らされた支援者の関係をもって支援するしかありません。

これまで福祉システムの経営論を考えるとき、ひとつの考え方としてトップダウンかボトムアップかといった、やや表層的なgironn
が行われることがありました。現代の福祉システムで最も求められているのは、そのどちらでもなくネットワーク型です。トップダウン、ボトムアップは所詮組織の枠内から外に出ていない議論であるためです。

福祉施設は自己完結していてはなりません。さまざまな人たちが様々な夢を持ち、様々な考え方の元に、色とりどりの生き方を求めています。ひとりひとりの夢に合わせて支援を行おうとするならば、多様な支援システムの長所や短所を認め合った上で協働するしかありません。その意味では知的障害者にかかわりのある親、教師、福祉施設職員、企業の指導員、専門家の人たちの出会いが大切です。

インターネットはもともと国防のシステムとして生まれました。ひとつの情報伝達ルートが破壊されてもいろいろなルートで通信を維持する事ができる網(ネットワーク)を構築すれば、破壊に耐えるという発想から生まれました。ちょうど同じ事が福祉システムにもいえます。単独の福祉システムが提供する支援は脆くて危うい。
私たちは、支援のネットワークを、生活の場に細かく張り巡らされたネットワークから、地域レベル、県レベル、国レベルに広げていく事が必要です。もちろん国がしっかりとした福祉の方向性、あるいは国の形を描いていないとネットワークの構築のしようがありませんが。

住まいの政策

福祉は、もちろん、目の前の当事者のために今できる事は何かを追求する仕事ですが、将来の安心も考えなければと思います。人間には未来があります。私の兄はもう60歳を超えていますが、
「大きくなったら○になりたい」
といいます。彼には確かに「未来」という時間があり、そこを見て生きています。ところが、今の政治家からは、将来が不安になるような言葉が次々と吐き出されてくると思いますがどうでしょうか。

あなたは、次の言葉は正しいと思いますか?
・外国人の介護人が入ってくれば、介護の担い手に困らなくなり、将来の不安がなくなります。
・税を下げると、市場が活性化され、失業中のお父さんの仕事が仕事に就く事ができます。
・高速道路で人が自由に移動できるようになると、新しい出会いが増えて地域の絆が深まります。
・公営や社会福祉法人営の住居を減らせば、障害がある人や高齢者の人は自由に住居を選べるようになります。
上記のスローガンは嘘がばれやすいように、わざと下手に書きました。でも、ここ20年くらい、政治は本質的には上記のような嘘を言葉巧みに私たちに浸透させてきたのではないでしょうか。最近のTPP議論が典型的なものです。

障害がある人の生活のうち、もっとも基本的な問題は「住まい」の問題だと思います。住まいは、単に家がぽつんとあるだけではなく、ご近所の人たちを含めた場の一部とみなされます。あまり人が動いてまわりの人が知らない人ばかりになると、障害がある人にとっては生活の質が下がります。

名東福祉会も障害がある人の仕事として、食品を扱っていますが、外国から入ってくる食量よりは多少高いかもしれないけれども、安全でおいしいお菓子やお米をいつも買ってくれる人がご近所さんだったらいいのにと思います。

障害者の住宅政策を行ってほしいと思います。
名東福祉会のケアホームは広いと言われていますが、カナダやアメリカのグループホームは個室を超えて、個人に複数の部屋が割り当てられていてとても広いです。名東福祉会のホームページに掲載してあるデンマークのホームはとてもとても広いものでした。日本でも、もっと公営や社会福祉法人やNPO立のケアホームに力を入れてくれるといいのにと思います。そうすれば、経済ももっと元気がでるでしょうに。

これまで、橋や道路、公共事業をずっと悪者扱いしてきましたが、本当でしょうか。例えば生活圏の道路を整備する事は、一般の人たちが自然に話をする機会を増やし、子どもや老人や障害がある人たちが楽しく安心して生活することに繋がります。ほんとうはまだまだ道路が足りないのではないか、と思います。

住まいを基本とした福祉政策をじっくり語る事ができる政治をお願いします。

地域福祉は主体的な参加によって実現される

先日名東福祉会の家族会主催でシンポジウムが行われました。コーディネーターは地域生活支援センターの小島所長、シンポジストは各現場の所長たちということで、たいへん有意義なシンポジウムとなり良かったと思います。家族会が参加して福祉目標について研鑽を深める事ほど地域福祉にとって重要な事はありません。

生活の質(QOL)を高める事が最も基本的かつ重要な福祉目標です。ところが生活の質はとらえる事がたいへん難しい概念でもあります。

生活の質は本人の行動だけではなく、生活にかかわる人たちの行動や法律、政策によっても影響をうけます。さらに本人が働いている職場や施設など組織の行動にも影響を受けます。近年、本人の生活の質を調査する場合には、できるだけ本人とかかわりのある人たちが参加して情報を得ることが望ましいとされるようになりました。障害者福祉の現場ではそれだけにとどまらず、家族会や地域の社会資源のスタッフも参加して本人の生活の質を考える事が必要であるとされています。

名東福祉会では、伝統的に「家族と職員が協働して本人の生活を考える」という事を大切にしてきました。家族が施設の目標設定に参加する事は、目標が広がり、何を実現すべきなのか多様になりすぎて経営が難しくなる恐れもあります。

もちろんいちばんよくないのは家族や職員の参加がない状況で経営方針が決定される事ですが、参加者の意見が広がり、優先順位が決められずにリストアップされた問題点が全て目標となってしまう事も経営に害を及ぼします。

本人のQOL向上について、よくよく話を突き詰め、予算や資源の状況に関して相互に理解を深めていくと、自然に今やるべき重要事項が絞られ、優先順位が決まってくるという事があります。名東福祉会の30年の実践がその事をよく語っていると思います。

ここで家族会活動のプロセスのあるべき姿について簡単に述べておきます。
1 家族会による生活の質向上のための運動の高まり
2 家族が掲げたニーズ(QOL)は現場の問題と関係があるのかを調査・選択
3 何を優先させるべきなのかを専門家を交え、委員会・理事会で対話検討
4 理事会・評議員会による計画の立案と決定
5 福祉サービスの実行開始と社会資源の横断的調整
6 新しい福祉活動の開始
7 本人のQOLの変化の測定
8 新しいニーズの出現と問題の意識化
9 より多くの参加者によるニーズ調査
10 資源開発のための家族会活動の拡大

もちろん、今では歴史が長い法人になってしまった名東福祉会の場合であっても、まだまだ各プロセスがスムーズに運用されているわけではありません。改善すべき点は多々あります。

これから、家族会と職員が、ますます協働してこのプロセスのひとつひとつをより洗練されたものにしていく事が必要です。それによって本人のQOLを改善していきたいと考えています。

平成の開国?

アメリカの圧力で始まったTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は民主党の「平成の開国か鎖国か」を争う選挙となるかもしれません。これは小泉構造改革のときの郵政民営化選挙を思い出させます。

・金融の解放
・弁護士の拡大
・サービス分野のいっそうの開放

要するに、日本の高齢者が保有している金融資産をいかに奪取するのかを目的とした動きに思えます。日本がTPPに加盟しても、アメリカはドル安に誘導しますから加盟しても輸入は増えません。中国が加盟しないのは素人目に見てもおかしな話です。なおいっそう「じじばば店」が消え、「シャッター通り」が増えていくのだと思います。そうなれば小さな町の小さなお店でみんなが集まる場という障害者の就労支援の典型的なモデル店も夢のまた夢。

サービス分野の開放は何を意味しているのでしょうか。現在規制がかけられているサービスといえば、
・医療
・福祉
に違いありません。特に福祉分野に国際的な垣根をなくしていく事が重大なインパクトを与えるはずです。外国の労働者が福祉分野で働けるようにする事は以前から何度も挑戦されています。今回のTPPは明らかに農業分野に特化された議論が展開されていますが、本当はサービス分野の規制緩和が目的ではないかと思います。「開国か鎖国か」といったあまりにも感情的な議論ではなく、もっと慎重で客観的な議論が必要だと思います。

もし安易に「開国」されれば、「平成の開国」は時を経て障害者福祉分野のサービスの在り方に影響を与えていくでしょう。障害者自立支援法の改正もその意義も吹っ飛ぶ話です。誰か止めてくれる人はいないのでしょうか。

もちろん障害者福祉分野にもある程度競争は必要だと思います。でも競争には土俵の公正さが必要ですし、競争相手との格差がありすぎても競争になりません。幕内力士と幕下力士が相撲をとならないように。高齢者福祉と障害者福祉は大きな格差があり、障害者福祉の中でも知的障害者の福祉はいつも厳しい状況に置かれています。

遅まきながら明けましておめでとうございます

今日の福祉情勢は「寒中の日だまり」のような日々です。アメリカと経団連の圧力で、昨年末に突然降って湧いてきたTPPのように、長期間にわたるデフレ政策がまたまた採られようとしています。デフレになると
・物価が下がるので障害がある人の生活は割と楽になる
・施設は当面の人件費が上がらないのでなんとか経営を維持することができる
・土地代が下がるので場所を確保しやすくなる
など、障害者福祉にとっては寒空の下、日だまりの中に佇むことができるような状況があるため、福祉関係のみなさんがあまり政治に対する怒りが湧いてこないという問題があります。でもこのままでは障害がある人も支える人も先が見えない不安のある日々を過ごさなければならない事になります。

障害者福祉が目指すべき道は、
1 障害があっても一般の職場で働く
2 生活はいつでもどこでも福祉サポートを利用できる
というのが理想です。そうした役割の分担を容易にするため、家庭と働く場と生活の場を統合的につなぎ、高い技術力を持った
3 個人の生活史を通した教育福祉機関
が必要です。現在の政策を続けていると企業が弱くなり障害がある人が働く場がありません。障害がある人の生活力が低下するため福祉サポートには利益が出ません。その上に成り立つ教育福祉機関の充実もありません。

そうした長年にわたる福祉不況の中、名東福祉会は、新しい時代にふさわしい新しい入所施設づくりにとりくんできました。これからもケアホームをつくり生活の場の充実に努めていきます。

就労の場については就労支援をベースとしつつ、農作物や食品、飲食店経営や企業連携など、地域の中でしっかりと根付いた活動に力を入れていきたいと考えています。

そして最悪の環境の中ではありますが、児童の行動療育と成人の相談事業を通じて教育福祉に力を入れていきます。この分野は制度が変わったからといってすぐに対応できるものではないため、今から力をいれていかなければなりません。

今は厳しい時代ですが、これに耐え、研鑽の努力を惜しまず、時代が変わった時に一気に羽ばたけるよう力を蓄えていきたいと考えています。