戦略の見直し

3.11以降、「地域福祉戦略」を大幅に見直す必要が出てきたのではないかと思います。

一般に、戦略を考えるときには、国際要因、国内要因、時代精神の3つについて考えなければならない、といわれています。
国際的には原子力によるエネルギー政策がとん挫したため、今後、経済が停滞し、化石燃料が高騰し、輸送コストが上昇し食料品をはじめとするインフレが進むだろうと思います。国内的にみても、原子力発電による30%のエネルギーの代替方法に関する議論が始まったとはいえ、実際に効力を発揮するのはまだまだ先の話です。これから日本経済が復活するためには数多くの障壁を乗り越えていかなければなりません。

福祉は単独では産業として成り立ちません。物資はもちろんのこと、国内の様々なインフラの整備や移動手段、情報手段、輸送手段など経済活動の「余禄」があって初めて良質な福祉システムが実現できます。まずは日本の復興がなされなければ、障害者福祉の復興もあり得ません。

おそらく、多くの困難があっても私たちの国である日本は必ず復活すると思います。これまでも何度も何度も国難を乗り越えてきた民族であるからです。

問題は時代精神の変化です。
これまでわが国はの福祉は、「時代精神」として分散型のケアを目指してきました。介護の場が一か所に集中していれば何か悪いことをしているかのような雰囲気がありました。ケアの場所が単に分散していることを地域福祉と言い切る専門家もいたりしました。ところが、3.11によって分散型の福祉の脆弱さが明らかになってしまいます。今回亡くなられた方の大半があまり動けないお年寄りや障害がある方だった事は極めて重いと思います。
災害時の救出と避難生活の維持を考えれば、現実的な障害者福祉ケアの在り方としては
・施設を安全な場に設置する
・地震があってもびくともしない頑丈な建物を建てる
・災害に備えて十分な備蓄をする
という事が大切だと思います。支援者である職員の安全も確保しなければ誰がどのように救助するのかさえわからないという事が今回の震災で明らかになりました。
もともと安全と安心を確保することと地域福祉は対立する概念ではありません。「本人の意思を尊重した質の高い安心生活」こそが福祉の目指す方向なのだと思います。それを実現するための戦略を「地域福祉」とするならば、時代精神に合わせてその戦略そのものを見直し、より適切な標語に切り替えていくべきではないだろうかとさえ思います。

東南海地震の発生確率は今後30年の間に70%。しかも今回の震災でその発生確率は大きくなっているといいます。その備えこそ急務です。

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