ゲーテの警告

適菜収の「ゲーテの警告 日本を滅ぼす『B層』の正体」(講談社)を読みました。小気味良い論評で、ゲーテの言葉を随所にちりばめ、日本の政治、経済、文化を根こそぎだめにしている元凶について鋭く説明しています。

B層は二流の意味。具体的には「民主党のマニフェストには騙された」といっているような権威・マスメディアを根拠もなく信じる人たちです。権威が大好きな一方で、権威をけなすのも大好きな人たちです。また理念やイデオロギーが大好きで、何かと「民主主義」を前面に出してきます。三権分立や官僚機構など、民主主義のリスクを回避するための人類の知恵を嫌います。集団の代表や役員を選ぶ時も理性的で知的な人を代表として送り、その人に「託す」事をしたがらず、くじ引きや順番制にしたがる傾向があります。

ゲーテは自由・平等・博愛を掲げたフランス革命については吐き気しか催さなかったそうです。ジャコバン派のロベスピエールが中心となってフランス革命は進みましたが、実態は野蛮で凄惨な恐怖政治。改革や革命好きの今の日本も怖いと思います。

内容については実際に読んでいただくとして、ひとこと。B層は手のわざがないからA層(一流の人)から与えられた理論、イデオロギーを信仰します。ゲーテは「理念をもっと少なくして、実践をもっと重んじなければならない」といったとか。障害者福祉についていえば、支援者としての手技をみがく事が現状の問題を解決する唯一の道です。そしてその手技(行動)は、実際に生活に寄り添ったものからしか受け継ぐ事ができません。地域福祉の理念や理論が先にあるわけではないのです。

暑い夏が続きますが、本書は一服の清涼剤となりました。

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