理事が施設長を兼務することは理事会機能を弱化する

前回、理事には報酬の支弁が認められない時代が長く続いていたと述べました。
裏を返せば、現在は報酬が認められています。
でも実際には理事が報酬を受けることは非常に困難です。

理由は法人本部に報酬を支払うための原資が少ないからです。
これまでの改正で、社会福祉法人の本部には施設から会計単位間の繰入が認められるようになりました。
つまり、施設会計に剰余が生まれれば法人本部に資金を移動しても法的にはかまわないことになっています。
ところが、障害者自立支援法で各施設の運営が汲々としているときに法人本部に資金を移動することは事実上困難です。

結局、理事が報酬を得るための原資は現状では寄付に頼るしかありません。
寄付者からすると、理事に寄付をすることは違和感があると思います。
やはり知的障害者施設を運営する社会福祉法人への寄付は利用者が直接潤うようなものに使用されるべきで、それが寄付をいただく原則でもあると思います。
理事の報酬として寄付金が使われるとしたら寄付は集まらないと思います。
これが名東福祉会が創立以来理事に報酬を支払ってこなかった理由です。

ただ、社会福祉法人の理事といえども、生活していかなければなりませんから収入は必要です。
それで知的障害者の福祉サービスを行っている他の多くの社会福祉法人では、理事は施設長を兼務しています。
施設長ならば収入を得ることができるからです。

ところが、施設長を兼務することはとりもなおさず、理事会の弱化につながります。
先の文章にものべたように、理事会の構成メンバーに施設職員は1/3を超えてはならないという規定が残っています。
理事会の2/3の理事は無給の理事。1/3の理事が報酬を得て施設長を兼務する理事という構成になるわけです。
理事会が形骸化されやすいことがうなづけます。

法的には理事会の機能を強化するための改革を行ってきたといいますが、現実には法人本部に回る資金が減少していることもあって
理事会の機能は弱くなっています。

もちろん、理事が報酬をもらってもそれだけでは理事会の機能が強化されるわけではありません。
施設をバランス良く統合管理し、将来の計画を立案するためには施設とは独立した形で法人本部の機能を強化する必要があります。

理事会が社会福祉法人の執行機関となるためには
1 すでに撤廃されている理事の1/3規定を愛知県が撤廃すること(本来、撤廃していなければならないはずですが)
2 法人本部機能の強化
が必要です。