久しぶりに東京で行われたある会に出席しました。
この会には北海道、山形、新潟、千葉、東京、静岡、名古屋、大阪、奈良、岡山、九州と日本各地から集まってきます。
メンバーは町長や社長、大学教授、社会福祉法人の理事長や施設長、医師、官公庁の課長、施設職員、障害者の親、障害者本人など多彩です。
共通点は障害者とともに生きること。様々な方々が自由に参加できる会です。

まず、自分の近況を語った後議題人入ることが慣例。それぞれの近況は全くバラエティに富んでいて楽しいものです。
例えば、56歳の建築家と44歳の写真家の結婚の報告。
定年退職をしたが思い切って快適な老人ホームに入居したからどんなところか見学においでという話。
数千万円の頭金と○十万円の月々の利用料がかかるが暮らしにはたいへん満足しているとのこと。

60代の男性は最近離婚して別居をしているが、家内が離婚届をまだ役所に持って行っていないので、どうなるかわからないとの報告には
なぜかみんな大笑いでした。

中には初めて就職したのが糸賀一雄先生のところで、池田先生や田村先生といっしょに働き、いろいろ勉強させてもらい、いまだに障害者支援センターで定年退職後も働いているという先生もあり、
この会員のすごさを今更ながらに実感しました。

しばらく障害者自立支援法の話になり、みな施設運営の大変さを思い知らされました。

終了後、友人が小金井に住んでいて一人暮らしだから気兼ねなく泊まってくださいといわれるので、何でも体験したい私はノコノコと友人のマンションへ付いていきました。
すてきなマンションで、亡き母親のかたみという古い家具類に囲まれ、快適な睡眠をとらせていただきました。

翌日、すてきな朝食を頂いた後、地域の介護センターとヘルパーの詰め所を見学させていただきました。パソコン教室、織物教室も手がけ、親たちの手作りの品から死せ宇tの手作り品までなんでも売っています。
地鶏の取り立て卵もあるし、ゼリーやクッキーもあります。親、ヘルパー、ボランティアが5-6人でローテーションを組んでいますが、採算が合わない。けれども大きなやりがいがある。
きっと全国でこのようなお店がいくつも開かれているのだと思いました。町の中で生きることの難しさの反面、地域とともに歩んでいる実践が輝きます。

次に訪れたのはかねてから見学をしたいと思っていたお弁当屋さん。
私にはもうひとり、弁当屋さんを会社組織で大きく事業展開している友人もありますが、今回は地域の中のお弁当屋さんです。
たいへん多彩な才能を持たれた方で、本を出版し、書道や詩も手がけられます。
近所のすてきな日本料理のお店で昼食をいただきながら、根掘り葉掘り経営について質問させていただいた。

私はもう15年若かったらと人生終盤になってる自分の立場を思いめぐらし、新幹線の中では居眠りもできないほど、充実した2日間を思い出しました。

2007年6月28日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

法人単位の経営

本部機能の強化は施設単位の経営から法人単位の経営にシフトしていくことを意味します。

これからの社会福祉法人はある程度の規模が必要と行っても、私たちは障害者福祉を専門とする社会福祉法人です。コムスンのように全国ネットで施設経営をするような発想はありません。一般企業のように施設が増えれば増えるほどスケールメリットが出てクオリティが上がるというものでもありません。やはり地域の特色やニーズに合致した適切な規模が必要ということになります。

名東福祉会の場合、名古屋市の東部地域にいろいろな施設や拠点を配置しています。この地域に日中活動と夜間ケアの場をつくっていくことが使命でもあります。日中活動といっても、障害の程度によって就職に近い働き方をする場から生活介護や訓練が中心の場まで幅広く利用者ニーズに合わせて配置される必要があります。名古屋の東部の人口を考えれば、少なくとも、日中活動の場と夜間ケアの場の双方をカバーできるような拠点を計画的に設置していくことが今日的な課題であり、障害程度の重い知的障害者の人口構成からみて、恐らく200人から300人が適切であると思われます。4人に1人が利用者となる可能性がある高齢者福祉を専門とする社会福祉法人とは適切な規模が違うのです。

知的障害者福祉の世界ではよほど効率的な運営に心がける必要があります。拠点を整備するときに、これまでのように施設ごとに事務部門や医療部門を用意しているとやはりコストがかかります。管理部門も統合ができるはずです。拠点の整備とともに拠点間の機能の重複をできるだけ抑える必要があります。

施設ごとに配置された専門職の職員が施設ごとにばらばらであったら効率的な運営ができるはずがありません。
例えば事務管理や財務管理。これは法人本部に機能を統合した方が合理的でしょう。
医療介護はどうでしょうか。現在のところ、看護師の配置義務は通所施設にはありませんからレジデンス日進に限られます。しかし、嘱託医と看護師は法人全体の医療的なサポートを行うように改めた方がより合理的です。
給食サービスは外部委託によってすでに法人単位でサービスが提供されているといえます。

ひとつの施設で管理部門をすべて支えることは難しいが、複数の施設が集まれば管理部門を支えることは容易になります。このように本部機能は主に施設からの繰入金によってまかなわれることが正しいのです。
法人本部の機能を強化するために収益事業を行って本部財源を確保するという考え方もありますが、現実には無理でしょう。とても健全な発想といえるものでもありません。

6月22日の午前中のこと。長年、ボランティアで施設につくしてくださった人の家族から
「病状が末期症状となり人工呼吸器をつけている。病院からは3ヶ月以上たったので病院からでなくては
いけないのだが、次の病院が見つからない。」
と電話がかかってきました。
「やってみるから少し待っていて」
と、ある病院に電話しました。そこは機械が8台あるから何とか受け入れるのではないかとの返事。その旨早速連絡を入れ
「後は、今の病院から出る日、受け入れる日を直接やりとりして頂けばよいから」
と伝えておきました。人生の末期の時期というのにどうしてこんなにもばたばたしなければならないのでしょう。
私はこの仕事をともに歩んできた人の最期の状況は私自身のことのように思え、胸が痛みました。

一昨年の今頃、私の片腕となってくれた親友が亡くなりました。今年は3周期にあたるからどうぞお参りに来て下さいとご家族からのお電話をいただきました。手製のお墓を立て、白い花の木を植え、廻りにはなずなの花がいっぱい咲いているといいます。でも、友人のこと、
「私は死んでなんかいませんよ。千の風になってあの大きな空を吹きわたっています。」
と声が聞こえてきそうな気がしました。

時間があったらお墓参りに行ってみたいと思います。きっと私はお墓の前で泣かないことを約束しますから…。

2007年6月26日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

法人本部機能の強化

理事会を構成する理事のうち、職員が1/3を超えることができないという規定を撤廃するということは、すべての理事が当該の社会福祉法人の役員で構成される理事会をつくることができることを意味します。障害者自立支援法の時代にあっては、施設を超えた法人本部が中心となった経営が必要となります。これからの社会福祉法人は法人本部機能を強化しなければらないと「社会福祉法人研究会」では報告されています。

障害者自立支援法では、利用者のニーズに合わせ、多様な生活を選択することができるようになりました。日中の生活だけでも就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労移行支援、生活介護、自律訓練があります。
夜間の生活の場はケアホーム、グループホーム、入所施設、在宅と多彩です。利用者はこれらのいくつかを自由に選択することができるのですから、施設という枠組みを超えた管理が必要であることはいうまでもありません。
地域の中に多様な選択肢が用意されるため、これまでのように施設単位で経営を考えることはできなくなったのです。

つまり、自立支援法時代においては、施設という枠組みを超えて経営の意志決定を行う機関を法人本部に置くことが必要となります。
意志決定が行われる機関とは理事会です。このように理事会の理事は法人本部にあって常に意志決定を行う「職業人」=プロフェッショナルである必要があると考えられます。

経営のプロフェッショナルな人といっても監査の指導の立場から見れば報酬をもらう「職員」ということになります。理事会を構成する理事のうち、職員が1/3を超えることができないということは障害者自立支援法時代の要請からずれてしまっていることがおわかりいただけるでしょうか。

このように理事会の機能強化とは、とりもなおさず法人本部機能の強化を意味します。

理事が施設長を兼務することは理事会機能を弱化する

前回、理事には報酬の支弁が認められない時代が長く続いていたと述べました。
裏を返せば、現在は報酬が認められています。
でも実際には理事が報酬を受けることは非常に困難です。

理由は法人本部に報酬を支払うための原資が少ないからです。
これまでの改正で、社会福祉法人の本部には施設から会計単位間の繰入が認められるようになりました。
つまり、施設会計に剰余が生まれれば法人本部に資金を移動しても法的にはかまわないことになっています。
ところが、障害者自立支援法で各施設の運営が汲々としているときに法人本部に資金を移動することは事実上困難です。

結局、理事が報酬を得るための原資は現状では寄付に頼るしかありません。
寄付者からすると、理事に寄付をすることは違和感があると思います。
やはり知的障害者施設を運営する社会福祉法人への寄付は利用者が直接潤うようなものに使用されるべきで、それが寄付をいただく原則でもあると思います。
理事の報酬として寄付金が使われるとしたら寄付は集まらないと思います。
これが名東福祉会が創立以来理事に報酬を支払ってこなかった理由です。

ただ、社会福祉法人の理事といえども、生活していかなければなりませんから収入は必要です。
それで知的障害者の福祉サービスを行っている他の多くの社会福祉法人では、理事は施設長を兼務しています。
施設長ならば収入を得ることができるからです。

ところが、施設長を兼務することはとりもなおさず、理事会の弱化につながります。
先の文章にものべたように、理事会の構成メンバーに施設職員は1/3を超えてはならないという規定が残っています。
理事会の2/3の理事は無給の理事。1/3の理事が報酬を得て施設長を兼務する理事という構成になるわけです。
理事会が形骸化されやすいことがうなづけます。

法的には理事会の機能を強化するための改革を行ってきたといいますが、現実には法人本部に回る資金が減少していることもあって
理事会の機能は弱くなっています。

もちろん、理事が報酬をもらってもそれだけでは理事会の機能が強化されるわけではありません。
施設をバランス良く統合管理し、将来の計画を立案するためには施設とは独立した形で法人本部の機能を強化する必要があります。

理事会が社会福祉法人の執行機関となるためには
1 すでに撤廃されている理事の1/3規定を愛知県が撤廃すること(本来、撤廃していなければならないはずですが)
2 法人本部機能の強化
が必要です。

理事会の改正が進まない

名東福祉会はとても立派な学識経験者の人たちが理事を無給で勤めてくださっています。
それはそれでたいへんありがたいことですが、理事として十分に経営責任を果たしていただきたいとはとてもいえない状況です。

措置制度のもとでは長く法人本部の経費が認められず、理事に対する報酬を支弁することが認められていませんでした。
施設の運営について、行政機関が事細かく指導し、人件費も保障する時代においては法人に意志決定機関がなくてもさほど問題がなかったともいえます。

ところが今日のように障害者自立支援法に移行した時代になったとしたら、施設単位の経営では不十分です。
ケアホームを自前の資金で建設したり、ケアホーム用の建物を借りたりして生活支援を行う時代においては、法人の意志決定機関の機能と責任が増大します。
理事会が法人の執行機関として機能するためには理事会のあり方の改正が必要となります。

そのため、国は社会福祉法人の理事会の機能をたかめるため、これまで改正をなんども行ってきています。
1 平成12年の改正では理事の人数については一律に6名以上とされました。
2 また平成17年の改正で、評議員会を設置している法人にあっては、施設長等施設の職員である理事の理事総数に対する上限(1/3)が廃止されています。
この2つの改正からすでに2年が経過し執行機関として十分に理事会が変わるための要件はそろっています。

制度改革から2年も経過しているため、名東福祉会は障害者自立支援法時代にあわるべく法人理事定数の削減と施設長の理事昇格について愛知県に問い合わせてみました。
結果は理事の中に施設職員が1/3以上入ることは許されないという回答でした。
また理事定数についても、誰が減ったかが問題で、学識経験者や地域の代表だけが減少する理事定数の減少は認められないとのことでした。
つまり事実上、何も変えてはいけないということです。
国の方針とは異なった行政指導は果たして合法なのでしょうか。

7月21日が来ると私は79歳になります。それで自動車運転免許も更新の時期となりました。

それに先立ち、自動車学校で高齢者研修を受けてまいりました。
高齢になるとどうしても目が悪くなり、バイクや子ども人の飛び出しなど対応が遅くなるということで、テスト機械を使っての反応検査を行ったり、目の検査を行ったり、実際に車に乗って実習も行いました。

参加した人はみな70歳以上で皆さん高級車に乗って研修会場まで来られたのですが、私一人が軽乗用車で。
みなさん口をそろえて「軽は危ない。年をとったらせめて普通車になさらないと・・・」と言われました。
最近の軽四輪はとても良くできているんですけど。
私は「日進は道が狭いので軽でないとダメなんです。」と言い張っていました。

指導員の先生も
「常は軽に乗っておられるのでしたら、少し加減をしてテスト運転してください。」
と注意してくださいました。

やってみるとクランクの左折、右折もうまくいき、後輪や前輪を道から落とすこともなく、おまけに車庫入れもぴったり!!
この中では最高齢だけどうまくやれたと内心ほくそ笑んでいました。

けれど成績表は
1 スピードの出し過ぎ
2 左折、右折が大回りすぎる。
全体的の評価はゆっくり、焦らず落ち着いて運転しましょう。
とありました。トータルの成績は5段階評価の3でした。トホホホホ・・・。
自慢、高慢はなんとやら。車の運転は常に謙虚に最新の注意を払って慎重に運転すべきだと肝に銘じました。

長時間の再講習をめんどくさいと思っていましたが、やはり時には我が力量を再確認することも大切であると反省し、
楽しむこともできた高齢者向き運転講習会でした。

2007年6月21日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

社会福祉法人の改革はこれからも進むでしょう。主に財政的な問題です。もう忘れかけてしまいましたが、三位一体の改革、補助金の改革、政策金融の見直しなどがあり、医療改革、社会福祉法人改革がはじまり今に至ったのです。

それ以前は社会福祉法人はつぶしてはいけないという意識が行政にありました。今も基本的にはそういう立場です。でも、100の法人がすべて潰れずに生き残る政策は、この時代、護送船団方式といわれこれ以上続けることは困難だと思われます。
今、市民のみなさんやマスコミからも社会福祉法人や介護サービスには非常に厳しい視線が注がれています。私たちはこの厳しい時代に、決して後ろ向きになることなく、少しでも利用者の満足に資するような効率化に努めていく必要があります。

一般の企業であれば生き残りのポイントはお客様の満足です。社会福祉法人がお客様である利用者の満足を得るために努力を重ね質の高い福祉サービスを提供しても行政にはなかなか評価していただけない構造になっていることが問題です。もちろん利用者には評価していただけますが。

質の評価の問題は行政の監査のあり方に関係があります。もちろん法令に従わうことは大切です。ただ、法令に従うことと、サービスの質を高めていくことは違います。監査は決められた内容をクリアしているかどうかに重点が置かれ、質の評価はほとんど関心事ではないことが問題でしょう。

名東福祉会で新しく始めた児童行動療育センターでは母子面談からビデオ記録の分析などを通し、きめ細かいアセスメント作業を行っています。ところがそうした療育を実施していてもいわゆる「預かり集団療育」と単価が変わらないという問題があります。レジデンス日進ではユニットケア、全室個室でナイトケアを行っています。利用者にはたいへん喜ばれていますが職員の配置数は増え、職員の介護の動線は相対的に長くなり、介護コストや労働の負荷が上昇します。
名東福祉会ではナイトケアの場と日中介護の場は分離しています。都市の近郊の閑静な住宅街にあるしゃれたレジデンスから都市の中にある日中介護の場や就労支援の場に移動することはいかにも普通の暮らしに近いものですが、入所更生施設のとなりに建てた建物に移動する生活となんら評価がかわりません。

お金だけで考えれば、児童療育センターを行うのではなく、保育所を経営してそこに障害児を受け入れた方が利益率は高いでしょう。
見るからにひとつの入所施設ですが、廊下がつながったとなりの「就労支援センター」に移動する方が建設費も移動の介護コストもかかりません。
地域生活支援センターの活動もやらない方が「効率的」経営が可能です。

私たち名東福祉会はいかにも不器用ですが、利用者の満足を追求してサービスの質を高める努力をしている法人の方が長い目で見れば生き残るのだと思います。でも現在は地域福祉にまじめに取り組めば取り組むほど法人の体力が衰えるという構造になっていて不公平感があります。

これから社会福祉法人に必要なのはむしろ「公共性」であると思います。法令遵守はもちろんのこと、皆さんに愛され必要とされる事業にいかに取り組みのかが問われているのだと思います。
せっかく利用者に満足していただき、仕事の質に誇りをもっている職員集団を抱えているのに、経営効率が悪いために退場を余儀なくされることはあってはなりません。正直者がバカをみない福祉のために、福祉サービスの質の評価は極めて大切だと思います。

ところで、これを書いているさなかにボランティアで上ノ山農園で作物を作ってくださっている方々から28,000円のご寄付をいただいたとの連絡が入りました。地域の人たちに信頼されていることを実感し、これでいいのかもしれないとも思いました。

6月18日は名東福祉会の後援会総会でした。
梅雨時で雨の心配もありましたが、たくさんの後援会員の皆さまが参加してくださってありがとうございました。
今回は盛りだくさんで、物品販売もやれば講演もある、おまけに例年好評のコンサートも盛り込まれ、時間通りに進行したものの、皆さんご満足いただけたか心配いたしました。

皆さんの感想は思ったより良くて、やれやれとまずは安堵いたしました。
理事長は毎度お金の話ばかりで・・と恐縮しながら、自立支援法に切り替え以来、繰り返していますが、
経営が困難なこと、良い職員を厚遇できないこと、でも利用者の皆さんの処遇は最高であること等を短い挨拶の中でいいました。

小島生活支援センター長の講演は自立支援法についてたったの30分の解説であったのにみんな
「良くわかった。今までいろいろ聞いたがちっともわからなかったけれど、良くわかった」
と、納得された様子。うれしいことでした。

その後のコンサートの音色の良かったこと。
演奏者たちは「聞き手がいいと不思議なほどぴったり息があって良い演奏ができるのです」
とおっしゃっていましたが・・・・みんな感動していました。

さて、来年はどうするか。後援会そのものを根本的に考え直し、よりよい後援会として再出発せねばと思いますが、みなさんのご意見をお寄せください。

その後、名東福祉会本部の方に、ご寄付が寄せられています。早速にご厚志ありがたく、御礼申し上げます。

2007年6月20日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

障害者基礎年金

障害者自身の収入が上がることはたいへん重要です。知的障害者の主な収入は工賃と障害基礎年金です。
もちろん就労支援で工賃収入を上げることは必要であるとしても、それには限界があります。

これまで障害基礎年金を上げる議論はありましたが、なかなか国会にまではあがってきません。
障害年金を増額することはその財源を確保することを抜きに議論は成り立ちません。これまで財源問題があって障害基礎年金の増額議論ができないのではないかと思います。

財源として考えられるのはまず介護保険です。現在、介護保険は40歳から加入が義務になっています。
もともと、制度が設計されたときは介護保険は20歳からの加入を前提としていました。
当初は20歳から障害者・高齢者のための介護保険加入のしくみを導入することを考えていましたが、いろいろな反対で40歳からの加入になりました。そのため、財源が大幅に減ってしまったのです。

障害者支援費と介護保険を統合は将来の課題として目標となっていましたが、このところ統合はないのではないかといわれるようになりました。
次々に出てくる社会保険庁の問題
障害者の程度区分の認定問題
医療との整合性の問題
などいろいろな問題があって、介護保険との統合→財源の確保という図式は壊れているというのが現状です。

となれば消費税の増税です。消費税は財源の切り札ですが、どの政治家も不利になることを公約やマニフェストに入れてくれません。

ですが、国は2011年までにプライマリーバランス(収入と支出のバランス)をとることを目標にしています。そうなればあらゆる社会保障制度の切り詰め策とともに、消費税の増税が必要になることは明らかです。
現在2007年ですから、社会保障制度にとってこれから数年の間は嵐のような逆風が吹き荒れることになると思います。

障害者基礎年金の増額は極めて重要です。
施設利用の際の利用者負担を少なくすることもひとつの解決策ですが、施設が提供するサービスだけで障害者の地域生活が成り立つわけではありません。
障害者年金を増額することは自由な暮らしを選ぶ上でも、障害者自身がサービスを選択する上においても、新しい障害者福祉サービスが創出される上においても決定的な要素だからです。

終戦が近くなった頃、私は当時通っていた女学校を繰り上げ卒業して看護婦学校に入りました。
ある日、和歌山に大空襲があり、私たち医療班は空襲で焼け出されたけが人を救援するため、真夜中に堺の看護婦学校の宿舎を出発しました。

夜明け近く和歌山市に到着すると、あたり一面火の海になったことがわかりました。
焼け落ちた家の柱からぶすぶすと煙があがり、黒こげになって倒れている人、焼けこげた馬がいます。

看護婦となったといっても16歳の私は心細く、怖くて足がすくみました。
私たちはとにかく市役所、学校を救護の拠点とすべく、5、6人の小さな班にわかれました。

学校に到着すると怪我をした人たちが次々に運び込まれてきます。
やけどで大きなボールのようにふくれあがってしまった紫色の顔をした人が私にか細い声で
「かんごふさん、み、水を・・・」
といいます。私はふるえる手で茶碗に水を入れ飲まそうとしました。
「何をしとるか!水を飲ませたらすぐに死んでしまう!」
上官が手に持っている茶碗を床にはたき落としました。
その人は結局次の日には苦しみながら死んでしまいました。

私が看護婦になったのは取り立てて使命感があったわけではありません。
当時、女学生たちは軍需工場に行くか、上の学校である大学に行くのかを選ばなければなりませんでした。

軍事工場に行くのがいやだった私は、はじめは師範学校に行きたいと
父に相談しました。学校の校長をしている叔父もおり、父は喜んでくれると思ったわけです。
ところが父は
「学校の先生にだけはなるな。学校の教師は子どもの育て方を知らない。そんな人にしたくはない」
といって許可してはくれません。そこで私は
「看護婦になりたい」
といいました。父はそれには大喜びでした。
「人に役立つ人間になれる。お国のために役立つ」
といい、私は堺の看護婦学校に進んだのでした。

看護学はほんとうにたくさんの勉強をしなければなりません。厳しい訓練もありました。私は生来、動きがのろく、お嬢さん育ちで身の回りのことは何もできません。

そんな厳しい寄宿舎生活でも私のことを何かと世話してくれる人がありました。あまり食べられない私は、世話をしてくださるお礼にといつもご飯を半分その人にあげました。その人はたいそう喜び終戦後まで何かと私のことを助けてくださいました。本当はドジで何かと失敗が多いのに、その人のおかげで看護学校で2番の成績を取ることができてしまったのです。

以来、今日までいつの日も私を助けてくださる人がいます。何をやってもドジな私を見るに見かねてか、どんなに危機が訪れても陰で応援してくれる人が不思議と現れるのです。今日、私が幸せでいられるのもほんとうにみなさんのおかげです。

2007年6月14日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

5月の忙しかったことといったら・・・
毎日のように午前、午後、夜と続いてとうとう名古屋手をつなぐ育成会の大会の日、
限界が来て寝込んでしまいました。
でも、2~3日過ぎるともとに戻り、何食わぬ顔をして毎日多彩な行事をこなしています。

6月1日から11日までは松坂屋本館で第9回目のフロール展がありました。フロールは花の意。障害がある人たちが創作した作品の展覧会です。絵や陶芸などいろいろな分野の芸術作品が集まります。おおぜいの人が来場され、皆さん熱心に絵画や陶芸作品を鑑賞してくださいました。

会場にたっているとよく人にいろいろ聞かれます。
中日新聞の記者さんが私にいろいろ質問されました。
「生(いのち)の芸術ってどういう意味ですか」

フロール会理事長の伊藤高義先生によれば、フランスのある画家が障害者の作品を生の芸術(アール・ブリット)と呼び、「人間の純粋な欲求にもとづく美術」と讃えたそうですが、私にはそんな難しいことはわかりません。それで、「生きている輝きをオーラのように感じることができるので・・」というようなことを言ったら、フロール展実行委員加藤奈々枝さんのことばとしてそのまま新聞に載ってしまいました。みなさん、ほんとうにごめんなさい。

明けて12日はレジデンスのお母さん方に誘っていただいて可児郡の御嵩町にあるささゆりの原生地に行くことになりました。

中央道を行くことしばし、多治見で降りてしばらく行くと目的地に着きました。
車を降りてすぐ、あちこちに笹百合が見え始め、行くほどに登るほどに増えてきます。
緑の木々の間から差し込む日を受けて笹原に可憐な花が群生していました。

「何の花が一番好き?」と聞かれると、いつも「笹百合」と答えます。
笹百合は踏まれたりすると成長できなくなるといいます。
そのため、笹百合を守るためたくさんの地元のボランティアさんたちがこの花を守ってくださっているそうです。
特に、御岳町は北限に近いそうで笹百合を守っていくことが難しいそうです。
もう少し平均気温が上がると笹百合たちはなくなってしまうかもしれません。

車で行って笹百合にふれることができる幸せと、便利な世の中になったことで笹百合が生きにくくなってしまったこと・・・。
でも私はどんなに遠くてもどんなに山道でも「ささゆり」と聞いたらなんとしても行きたくなってしまうのです。
ボランティアさんと親しく話をし、ほうばすしを食べ岐路につきました。

2007年6月13日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

平成18年度の決算を終えて

名東福祉会の平成18年度の決算で、名東福祉会の利用料収入は平成17年度の3億8,680万円から平成18年度の3億3840万円
へ減少した。約4,840万円の減収となった。

これを施設別別に見ると
1 通所授産施設「メイトウワークス」は1,500万円(▼19%)の減収。
2 通所授産施設「天白ワークス」は1,370万円(▼18%)の減収。
3 通所更正施設「はまなす」は840万円(▼16%)の減収。
4 入所更生施設「レジデンス日進」は910万円(▼6%)の減収。
となる。障害者自立支援法は特に通所授産施設にとって打撃が大きかったことがわかる。主に利用報酬が月払いではなく日額計算になったことが大きい。

社会福祉施設の経費は人件費が大半を占める。
この4施設について名東福祉会では給与規定を改定するなど人件費を抑制し、収入の大幅な減少に応したが、それでも人件費比率は69%~73%を占める。
これまでは施設の建設費や修繕費は75%が補助金でまかなわれていたため、人件費比率が高くてもやってこられたが、
施設を建設するための補助金がなくなった今、この人件費比率で健全な経営をするのは難しい。

健全な経営を考えると社会福祉であることを考慮しても人件費比率は60%代に抑える必要がある。
となればさらに人件費を抑制するか別途収入を確保するかのいずれかだ。
年々現場職員の人材確保は難しくなる一方だ。これ以上の人件費の抑制は経営的に問題が大きいため、利用料や報酬の確保や後援会組織の充実など利用料以外の収入の確保にも努める必要があろう。

名東福祉会は今後、通所授産施設のまま障害者自立支援法時代を生き残ることは難しいと考えている。
もともと就職を希望する人がほとんどいない法人であるため、今後は生活介護施設への転換を目指すことになる。
ところが生活介護施設に転換すると、現状よりもさらに厳しい経営状況になる。
知的障害者施設は利用料について平成18年度の激変緩和措置で9割が保障されているため(実際には9割にはならない計算方法だが)、
転換すると利用料が減少することがわかっているためだ。

八方ふさがりになりつつある知的障害者福祉。これを打開していくためには地域や利用者から望まれるニーズの高いサービスに名東福祉会の資源を集中していくしかない。

まずニーズが高いのはケアホーム。ケアホームを展開して24時間体制の福祉サービス事業体に事業を転換していくこと。
次に新しい事業である生活介護サービスの内容を充実させるため生活介護プログラムの開発が急がれる。
また、授産事業を競争力のあるものにするため企業と連携することも考えていきたい。
さらに障害者福祉施設同士でネットワーク化を進め、よりきめの細かいサービスが打ち出せる体制を確保することが必要だ。

いずれにしても法人側の努力だけでは限度がある。収益事業に関する規制や寄付金の取り扱いなどの監査指導のあり方や補助金制度のあり方を含め、地域福祉を進めるにふさわしい「行政の改革」が望まれる。