作業療法

作業療法は成人の授産施設では死語になっていて、今ではほとんど振り返って見られることはない言葉です。他の分野の高齢者福祉、精神障害者福祉の現場では現在でも、作業療法士(OT)が配置され、「作業療法」が積極的に取り組まれていますが、知的障害者福祉分野では「作業療法」について考える人はほとんどいないのが現状です。でも、私は障害がある人の日常生活、特に新しく始まった「生活介護施設における日常のプログラム」の課題を考えるときに、もういちど注目してもいいのではないかと思います。

授産施設(現在ではセルプといいます)では、より社会参加や自立が目的となっているために、現実的な収入の糧につながるような経済活動を展開することが重視されるようになっています。例えば、大規模に印刷やクリーニング、縫製等、伝統工芸品、織物、陶磁器、家具製造等の職人的作業やパンやクッキー等の食品を作る作業、ポーチ類等の手作り布製品を作ったり、木工パズルなどを作るなどの活動が展開されるようになってきています(これは全国社会就労センター協議会(セルプ協)の情報です)。しかし、障害が重くなったり、年齢が高齢になったりすると、こうした作業に従事することは難しい人が多くなります。だいたい、知的障害者にも定年のようなものがあってもいいと思うのですがいかがでしょうか。

これから就労支援事業が就労作業によって収益を上げて行くことは難しいと思います。現在世界を重苦しく覆っている不況や、日本国内の仕事が海外にシフトしていく現状では、資本もノウハウも販売ルートももたない知的障害者施設が収益を上げ続ける事はなかなか難しいのが正直なところです。とりわけ、生活介護施設と就労支援B型施設というようにただでさえ小さな集団である施設を、施設の内部で複数の部門に分化せざるを得ないような制度設計のもとでは、作業収益を効率よく上げて行くことはこれから困難になっていくことが予想されます。また、企業の下請けとして、特例子会社ができてくると、今後、生活介護施設の魅力がじり貧になるのではないかと危惧しているところです。就労支援事業よりも作業能力の点で「下位」に位置付けられてしまっている生活介護では、職員が作業に意味を見出す事は難しいのかもしれません。

そこで原点に帰って「作業療法」です。
日本の知的障害者施設でも、1980年代以前は施設の作業は「作業療法」としての位置づけがなされていたとように思います。作業療法における作業はペグ棒を穴に差し込むだけの身体機能の改善に着目したものから、クリーニングや厨房作業など非常に実生活に近い形式で実践されるものまで幅広く展開されています。
作業は利用者の安定に結びつきます。休日を充実したものにしてくれます。旅行やレクリエーションも作業があってこそ楽しいものになります。毎日、人のために動き(これは働くという漢字の本来の字義ですが)、喜ばれる活動をする事は、生きがいや満足にもつながります。

「収益」を上げる施設が良質な施設であるとは限りません。売り上げや収益は指標としてはわかりやすいと思いますが、収益や消費などお金という指標ではとらえられない経済活動が世の中にはあります。

生活介護施設は作業しなくても良いというのは誤った理解です。私たちは作業の原点に帰って良質な生活の実現のためにもういちど作業をとらえなおす必要があるように思います。