支援センタースタッフの充実

経済が熟成し、国がいわゆる「福祉国家」となるに従って、政治家の役割と、官僚の役割は次第に重なり合ってくると言われています。別の言い方をすると、政治家が意思決定を行い、行政がそれを遂行するという政治主導といわれる単純な構造は現実的でなくなってくるのです。

障害者福祉の場合を例に考えると、政治家は障害者福祉現場を回り、その問題について体験する必要があります。また官僚についても、地域のニーズを先読みし、学識や経験で適切な政策立案をする事が求められます。

今の日本の現状を考えると、障害者福祉に関心を寄せる政治家はほんとうに数が少ないと思います。一方、官僚についても、日本の官僚は先進国の中で数が最低だと言われています。これでは現場で、どういった問題が起こり、どういった政策が必要なのかを的確に判断しながら政策を立案する事が難しいといわれてもしかたがありません。

従来、日本では地域のニーズをつかむために、行政の内側と外側の両方の領域で活動することを期待して社会福祉法人が設立されました。社会福祉法人が生まれた経緯は行政の補完的な役割だったと思います。

ところが、現在の社会福祉法人のイメージは「老人ホーム」に代表されるように、施設経営と強く結びついています。官僚の仕事を地域密着型で遂行するという行政マンとしてのイメージとはちょっと異なると思います。平成に入り、失われた10年を経て、小泉構造改革以降は社会福祉法人が市場の中でサービスを競い合うような新自由主義的な福祉へと向かうようになりましたから、行政も社会福祉法人も「社会福祉法人の職員は行政マンである」と考える人はほとんどいなくなったと思います。

しかし、本来の社会福祉法人の役割が「行政から委託を受け、地域に密着しながら福祉施策を実効的なものにすること」であるとすると、現在のように、株式会社と社会福祉法人が同じような福祉サービスを提供する実態とはもう少し異なった機能が求められるはずです。私は今後ますます強まってくる福祉国家としての要請に答えるには、住民と福祉施策の間のギャップを埋める「実戦部隊」が充実したものにならなければいけないと思います。動く人がいなければ地域の実際的なニーズもつかめないし、ニーズがわからないから高度な知識と経験を持った官僚の潜在力も発揮できないし、官僚から情報が上がらないために政治家の感心も高まらないと考えています。

いいかえれば、これからの社会福祉の課題は、いかにして行政と地域のギャップを埋める実戦部隊を増やしていくかだと思います。私はその「実戦部隊」こそが障害者支援センターのスタッフだと思います。障害者支援センターの職員は名東区10万人の人口に対してたったの3名。これでは世界一少ない官僚の数を補う事にもなっていません。まずは各センターの職員数と予算の拡充が望まれます。