バランスの良い現物給付と現金給付

本日の衆議院本会議で鳩山首相は「これからは現物給付と現金給付をバランスよく支給していく」と述べました。社会保障施策が現実的な対応になってきたと思われます。

民主党はこれまで、これからの社会保障施策について、現金給付を中心に政策をすすめると述べてきました。子ども手当てや農家の個別保障はその典型的なものです。

現金給付については、評論家が指摘しているように、その財源が確保できるのかという問題はもちろんなのですが、その前に、その施策が目的としている福祉サービスを利用者の立場に立って効果的に維持・発展できるかどうかについて問題があります。例えば子育て支援を目的として現金給付が行われた場合、実際に子育てに使用されるかどうかはわかりません。貯蓄や家のローンに回ることも考えられます。

現金給付は本来は、現金を受け取る人の生活の質を高めるためにある政策であるはずですが、現金給付を重視しすぎると、かえって地域福祉の衰退を招き、往々にして失敗をすることが多いと思います。例えば、ドイツでは高齢者福祉に現金給付が行われました。その結果、大幅に現金が高齢者の家庭にプールされ、結果的に高齢者福祉サービスが縮小し、地域福祉の衰退が起きました。日本でも高齢者福祉や障害者福祉でこうした方法がとられれば、より安く、より効率的な経営を行っている施設-つまりそれは大規模施設のことですが-に利用者は集中します。

つまり大規模な社会福祉法人は成長し、それとともに、地域の小規模な施設は衰退していきます。そうなると地域社会の多様性や連携による問題の解決力は失われ、「お金のかからないご近所の問題解決力」は失われてきます。そうなれば国全体としてみたとき、かえって高コストな福祉となりかねません。現金給付は一時的には利用者にとってありがたいのですが、しっかりと地域に根ざした現物の福祉サービスが存在しないとかえって悲惨な結果を招きかねないのです。

福祉の場合、やはり地域の中でバランスよく公共的なサービスの提供を行うことが必要になります。利用者の利便性を高め、いわゆる現物給付をバランス良く残すことが必須なのです。特に、遠く離れた大規模施設に行くのではなく、小さな地域社会の中で生活を維持することができる仕組みを構築する方法についてその方向性を指し示すことが必要となります。

今回の鳩山首相の「静かな方向転換」はとりあえずは良いことであると思います。