家族会の役割

先日の常任理事会で家族会の役割について確認が行われました。家族会の役割について明確にしてほしいというご意見があったということが議論の背景にあります。そこで、このブログをお借りして、名東福祉会の家族会の役割について確認をしたいと思います。

私は、名東福祉会の家族会は伝統的に非常に結束の強い会であり、名東福祉会を強力に支えてきたと思います。それが今日の名東福祉会の礎を築いたと確信しています。さらに、いったん名東福祉会に危機が訪れたときには積極的にこれを助け、それぞれの危機を乗り越えてきた歴史があります。
こうしたことから、障害者のための社会福祉法人の家族会の役割は、私としては次のようにまとめることができると思っています。

第一に、名東福祉会の利用者の家族の成員がお互い仲よく協力し合い、また、家族どうしの交流を深めてお互いの家族を支えあい、自らの力に応じた役割をみつけ、障害がある人の支えとなり、障害がある人の人生を実りあるものにする活動を行うことです。

第二に、障害がある人が生き生きと生活するために、地域福祉が必要であることを地域に訴え、率先して地域福祉の実践の理念を語り、力を結集して、障害がある人にやさしい街づくりに貢献することです。

第三に、そうした活動が実りある活動となるよう、常日頃から自身を磨き、家族会員の相互の研鑽に努め、様々に興味深い楽しい活動を企画し、相互の交流を深化させ、進んで研修を企画・実践していくことです。

以上が名東福祉会家族会の役割であることが確認されました。

社会資源開発の新しい流れ

エスノグラフィーといわれるマーケティング手法があります。このマーケティング手法では商品ユーザーの「生活場面」に入り込んで徹底した「観察」を行います。エスノグラフィーの手法を用いて製品開発された商品例として、アップル社のiPhone、マイクロソフトのウィンドウズビスタ、掃除機のダイソンなどが有名です。そしてそれらの製品は大成功を収めたため、エスノグラフィーはマーケティング分野で注目を集めるようになってきました。

エスノグラフィーの特徴は調査をするときに仮説を立てないこと。仮説を立てないで「リアルな生活場面」を観察するので、開発担当者が「思いもよらない」ニーズを発見することがあります。エスノグラフィーでは企業側の論理ではなく、できるだけユーザー側に歩み寄ってユーザーを徹底的に観察し理解することが求められます。そうした立場で開発された製品はときとしてたいへん魅力的な商品となります。

このエスノグラフィーの手法は地域福祉の分野でも応用可能です。例えば社会資源開発担当者が障害がある人の家庭を訪問し、一定期間の間、障害者の生活状況の観察を行うことが考えられます。顧客(障害者)が朝何時に起き、何時に家を出て、通勤途中でどんな困難に会い、職場や施設でどんな生活を行っているのか。その中で対人関係でどんな困難を経験しているのか、あるいは生活環境に対してどのような言語行動を発しているのか、そして環境はどんな反応をしているのかをビデオ等を用いて観察し、リアルなニーズを掘り起こしていきます。そしてそうしたマーケティングを元に、新しい社会資源のあり方を開発するということが考えられます。

従来、こうした社会福祉分野を対象とした観察と商品開発は新聞やテレビの役割だったのかもしれません。ただ、マスメディアは最終的に行政に対する要求言語行動という形になり、主体的な商品開発(福祉サービスの提供者になる)という視点にはなりえません。あくまで問題提起で役割を終えます。それに対し、エスノグラフィーは地域福祉の分野で福祉サービスの提供者が行うことがポイントです。もっとも、マスメディアの場合には強い仮説があって取材を行うため手法的にはそもそもエスノグラフィーの手法とはかけ離れています。

あるいは、かっての親の会活動は一種のエスノグラフィーであったのかもしれません。確かに家族会と行政の担当者が頻繁に会話を積み重ね、新しい福祉制度の創出に向けて動いた時代がありました。
ただ、それはあくまで福祉制度設計上の調査であり、福祉事業者が多様なサービスを創出し、競争を行い、障害者が商品としての福祉をその質で選択する時代に入るとエスノグラフィーを含め、マーケティングは行政サイドの役割から離れます。

障害者自立支援法が制定され、さらにそれが改定されようとしている今こそ、福祉サービスの提供者側が顧客の側に徹底的に立ったたマーケットの観察と障害者ニーズの開発を事業化すること-まさにエスノグラフィーの考え方こそ、これから最も注目が集まる社会資源開発手法になると思います。

再会

先日、他法人の役員と所長3名が当方へ見学に来たいとの連絡があり、久しぶりにお目にかかれると思ったのでレジデンス日進へ出かけることにしました。

玄関先で会った利用者やデイサービスにいた利用者たちが目ざとく私を見つけ、
「どうしてたの?」
「会いたかったわ」
と言ったとたん、涙をポロポロ出して手を握り締めて来ました。
重度の利用者もそばへ来て、握手を求める人、体にひっつく人、表現はそれぞれ違いますが、みんな私が顔を見せたことをとても喜んでいてくれるのがわかりました。長い間この仕事を続けて来たものの至福の時だと私のほうが泣きそうになりました。
「病気がもう少し良くなったら、また来るからね」と言うと
「うん、きっとだよ!」と口々に何か言っています。

名東福祉会を立ち上げて30年、知的障害者の福祉に携わって50年、中には辛いことも、くやしいことも沢山ありましたが、それらはみんな忘却の彼方・・・。今は、長い間の苦労の連続はみんな美しく、楽しい思い出になって、私を励ましてくれるばかりです。

2010年2月8日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝