新たなビジネスモデルの構築を

この1年、世界は不景気の時代に入り、しばらくの間は地方自治体の財政難から知的障害者福祉についても危機的な状況が続くと思われます。
名東福祉会はこうした厳しい時代の中にあっても、利用者の満足の探求を続けていかなければなりません。

現在の障害者福祉は横並び、官主導で運営されていて、まさに「古いビジネスモデル」で経営が行われてきています。
こうした体制のもとで緊縮的な財政政策がとられると、それにつれて、最も末端の下請け作業を行っている授産施設などの障害者福祉サービスもジリジリと衰退してしまう傾向があります。
障害者雇用や就労支援などのしくみが崩壊してしまわないよう行政によるなんらかの手当てが必要であることはいうまでもありません。

その一方で、私たち社会福祉法人の経営についても、自ら変革していくことが必要です。
社会福祉法人が長期的に安定して利用者の満足を追求し、新たに地域のニーズを掘り起こして地域に根ざした組織として定着していくためには、
私たちが社会福祉法人の中核的な競争力、すなわちコア・コンピタンスを持てるように変わって行くことができるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。

世界的な不況により、今後も数年間は国内の産業構造が大きく変貌していくことが予想されます。
企業は生き残りを掛け、雇用の調整など様々な分野で流動化が起こり、それにあわせて新しい競争力をもったサービスが創出されることが考えられます。
これらの中には、従来福祉的な分野に限定されて提供されてきたようなビジネスモデルも出てくることが予想されます。

いわゆる企業内に設けられる障害者就労支援センター、
高齢者ホームと障害者ホームの複合モデル、
障害者多数雇用農業法人モデル、
企業内保育所、
企業連合的なNPO組織が経営する障害児療育センター、
企業や自治体を顧客とした障害者多数雇用事業所、
など、新しい福祉モデルがその芽を吹き出しつつあります。これまでは実験的な試みであったものが、確固たるビジネスモデルとして福祉分野に進出してくるはずです。

また、そうしたビジネスを支える基礎技術の分野の進展も見逃せません。
介護ロボット産業の進化、
通信技術の進化と遠隔地の生活支援技術、
電気製品のインテリジェント化とネットワーク化による見守りシステム、
福祉事業・医療関連ソフトウェアの進化、
都市における自動車利用のしくみ
福祉ケア付きマンション
行動科学の進展
など、新しい福祉ビジネスモデルの創出を支える産業技術も育ちつつあります。

人の流動化、社会資源、基礎技術の進展により、これまで考えられなかったような新しい福祉ビジネスモデルが生まれて来るのではないかと予想しています。
肝心なのは世界的な経済の変動に連動して流動化した雇用を吸収しつつ、行き場を失った資金を集めて福祉ビジネスの進化が始まるのではないかと思われる点です。

私たち障害者福祉分野の人間は、この数年の間、障害者自立支援法ショックに翻弄されてきました。
新しい福祉ビジネスモデル創出へのムーブメントについては、障害者福祉分野では工賃倍増計画がいくつかの福祉大会で提案された程度で、ほとんど意識もされていないのが現実です。

私たち社会福祉法人は旧来からの古い福祉モデルにしがみついているわけにはいきません。すなわち横並び主義・要求行動至上主義・天の声待ちの体制から、
新技術に積極的に関心を持ち、
地域ニーズと利用者満足の追求のために、新たな展開を求めていくことが必要であると思います。

一時の現象でしかない規制強化への揺れ戻し施策や、福祉予算への一時的財政出動に気を緩めることなく、今後10年のスパンで社会福祉法人の改革を継続していくことが必要です。
厳しさが増す今こそ、新しい時代に向け、社会福祉法人の持てる力を結集していくことが必要なのではないでしょうか。

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