決算報告

決算報告
2011年5月25日、141回理事会において、平成22年度名東福祉会決算が承認されました。

事業活動の収入は538,380,739円(前年度497,005,487円)となり8.3%増加しました。増加の要因は主に寄付金です。名東福祉会では平成23年度中のケアホームの建設を予定しており、この建設資金に対して35,000,000円の寄付がありました。各施設に対する寄付も含めた寄付金総額は60,143,300円(前年度22,736,600円)で264.5%の増加となりました。

昨年度は自立支援法の改訂があり、施設利用の自己負担分は29,736,720円(前年度36,092,733円)で17.6%減少しました。それを補う形で補助金が増加しましたが、寄付金を除く収入としては478,237,439円(前年度474,268,887円)で0.8%増の微増に留まりました。利用者の自己負担は主に給食費の負担分でした。
一方、事業活動支出は474,747,616円(前年度462,234,621円)で2.7%増加しています。

その結果、収支の差額は63,633,123円(前年度34,770,866円)となりました。建物の減価償却費があるため、寄付金を除く事業収支でみると3,489,823円(前年度12,034,266円)と繰越金は減少(71.0%減少)しています。

事業支出のうち最大の項目は人件費です。平成23年4月1日現在の常勤換算前の職員数は嘱託医を除き89名です。この職員で213名の障害がある方々の介護を行っています。平成23年度人件費は法人全体で336,960,042円(前年度325,699,394円)で3.5%の増加となっています。一人当たりの単純人件費は3,786,000円ですから、極めて低い水準にとどまっている事は否めません。

寄付金のうち、施設建設資金として寄付があった42,586,402円をケアホーム建設のための預金に積立ました。

今年は年度がわりのタイミングで3.11の大震災があり、多くの国民が被災されました。特に、高齢者の方や障害がある方の中で犠牲になられた方が多かったといいます。今後、名東福祉会としては、いつか起こる東南海地震に備え、建物の強化や備蓄、防災訓練など災害対策を強化する必要性が強く認識されました。理事会においても今後の災害の準備の必要性が指摘されました。

来年度は新体系への移行のタイムリミットを迎えます。利用者のニーズを分析し、より安定的でニーズに沿った質の高い運営ができる体制を目指し、効率的な経営を目指して事業を再編していく必要があると思います。

詳しい決算内容については事業報告書の形で会員の方に配布いたします。また事業報告書の印刷前であっても財務諸表の詳細をお求めの方は法人本部にお申し込みください。コピーを配布させていただきます。

戦略の見直し

3.11以降、「地域福祉戦略」を大幅に見直す必要が出てきたのではないかと思います。

一般に、戦略を考えるときには、国際要因、国内要因、時代精神の3つについて考えなければならない、といわれています。
国際的には原子力によるエネルギー政策がとん挫したため、今後、経済が停滞し、化石燃料が高騰し、輸送コストが上昇し食料品をはじめとするインフレが進むだろうと思います。国内的にみても、原子力発電による30%のエネルギーの代替方法に関する議論が始まったとはいえ、実際に効力を発揮するのはまだまだ先の話です。これから日本経済が復活するためには数多くの障壁を乗り越えていかなければなりません。

福祉は単独では産業として成り立ちません。物資はもちろんのこと、国内の様々なインフラの整備や移動手段、情報手段、輸送手段など経済活動の「余禄」があって初めて良質な福祉システムが実現できます。まずは日本の復興がなされなければ、障害者福祉の復興もあり得ません。

おそらく、多くの困難があっても私たちの国である日本は必ず復活すると思います。これまでも何度も何度も国難を乗り越えてきた民族であるからです。

問題は時代精神の変化です。
これまでわが国はの福祉は、「時代精神」として分散型のケアを目指してきました。介護の場が一か所に集中していれば何か悪いことをしているかのような雰囲気がありました。ケアの場所が単に分散していることを地域福祉と言い切る専門家もいたりしました。ところが、3.11によって分散型の福祉の脆弱さが明らかになってしまいます。今回亡くなられた方の大半があまり動けないお年寄りや障害がある方だった事は極めて重いと思います。
災害時の救出と避難生活の維持を考えれば、現実的な障害者福祉ケアの在り方としては
・施設を安全な場に設置する
・地震があってもびくともしない頑丈な建物を建てる
・災害に備えて十分な備蓄をする
という事が大切だと思います。支援者である職員の安全も確保しなければ誰がどのように救助するのかさえわからないという事が今回の震災で明らかになりました。
もともと安全と安心を確保することと地域福祉は対立する概念ではありません。「本人の意思を尊重した質の高い安心生活」こそが福祉の目指す方向なのだと思います。それを実現するための戦略を「地域福祉」とするならば、時代精神に合わせてその戦略そのものを見直し、より適切な標語に切り替えていくべきではないだろうかとさえ思います。

東南海地震の発生確率は今後30年の間に70%。しかも今回の震災でその発生確率は大きくなっているといいます。その備えこそ急務です。