福祉ビッグバンに備えて

2003年の6月に中村秀一氏の私的諮問機関である高齢者問題研究会の報告「2015年の高齢者福祉」の構想が発表されてから、これまで実に多くの改革が高齢者福祉の世界で進んできました。2015年は団塊の世代がすべて高齢者となる年です。

改革の内容を具体的に見ると、
1 小規模・多機能サービス拠点が増え在宅から利用する人を増やす。
2 高齢者施設は有料老人ホームか適合高齢者専用賃貸住宅などの特定施設に切り替わえる。
3 住居費・食費を利用者負担とし、個室化をはかり施設と居住との差をなくす。
4 医師の報酬は医療保険でまかない、医療サービスを外付け化する。
5 低所得者には利用料の配慮を行う。
ということになっています。より医療が必要な人は医療保険が適応される施設へ、医療ニーズが低い人は新しい形式の「住まい」に整理していくとされています。

こうした流れを受けて、建築会社や不動産開発会社は医療とドッキングした高齢者住宅をどんどん供給するようになるでしょう。またすでに医療法人の福祉への参入が解禁されたり、療養型病床の廃止が決まるなど、2015年に向けていろいろな制度が打ち出されています。実際に、住友林業や豊田通商などがそうした新しい高齢者の「住まい」を発表しています。また、コンビニや宅配便会社やセキュリティー会社がなんらかの形で弁当の宅配、安否確認、家事支援事業に参入すると思われます。そうした巨大なマーケットに向けて企業は動いているのです。

医療現場の改革もたいへんです。診療報酬が見直され、介護予防にシフトしていくでしょう。有償診療所・訪問介護・介護事業所・住宅型有料ホームなど、在宅福祉のための各種サービスの連携が進みます。ショッピングモールのように医療や介護や「住まい」が集積した施設が町の中に増えていくと思われます。

こうした高齢者福祉の世界の中に障害者福祉は介護保険で統合されるのです。昨年度導入された1割負担、食事負担もこの流れのなかにあります。もちろん新しい「住まい」は障害者も利用できます。身体障害者の人の中にはこうした「住まい」で暮らしてそのまま「在宅勤務」したり、町の障害者就労継続支援事業所へ通所する人がでてきてもおかしくありません。そうしたニーズの変化に合わせて、社会福祉法人に限らず、一般企業も就労継続支援に参入するかもしれません。障害者にとって、選択肢が増えるわけですからそれはそれで歓迎すべきことです。しかしその一方で既存の社会福祉法人は倒産するかもしれないのです。刻一刻とそうしたビッグバンに向けて世の中は動いているのです。

新しい時代に障害者福祉サービスを提供する法人が確固とした役割を担うために、私たちはどうしたらいいのかが問題です。入所型の障害者福祉施設はこれからますます重度者への対応が求められます。既存の通所の施設の多くは最終的には生活介護施設へとシフトしくことになるでしょう。重度者や自閉の人に対して良質なサービスが提供できる施設として生き残ることになると思います。その一方で障害者が能力に応じて働くことができる魅力ある職場を町の中に提供していくことも必要です。先ごろ軽減措置はうちだされましたが、厳しい状況にはかわりありません。