■新しく生まれた雇用型就労支援 具体的モデルを示す絶好の機会

ヤマト福祉財団の小倉氏が既存の社会福祉制度に乗らない形式で知的障害者の雇用の道を開いたことは私たち障害者福祉にたずさわる人間にとっては大きな衝撃となった。
特に、厚生労働省が受けた影響は大きく、今回の障害者自立支援法にも小倉氏の考え方が色濃く影響を与えたことが推察される。

過去25年間、名東福祉会の授産施設においても就職者はほとんどない。ただ、授産施設のあり方として就職者が少なかったことはほんとうに批判されるべきものなのであろうか。

就職した障害者が少ない理由の最大の要因は、就職を希望する障害者が少なかったことにある。授産施設を利用する利用者の就職ニーズは極めて低い。
私たちの施設の利用者は、そもそも就職の支援を求めているわけではなく、質の高い「継続的支援」を求めている。
ヤマト福祉財団のモデルにしても、既存の授産施設が支払っている工賃の低さを問題にしたものであり、就職の実績の低さを批判したものではない。

ほとんどの知的障害者にとって、支援を継続することは非常に大切だ。障害者自立支援法に新しく規定された「就労継続支援」は特定の知的障害者に、特定の支援環境を継続的に提供するモデルだ。

雇用型の就労継続支援は、継続的な支援を受けつつ、企業で働くことで得られるのと同質のライフスタイルが得られる福祉サービスである。
確かに、この事業に与えられる支援費報酬は最も低い。だがいわゆる健常者を雇用することが認められており、「共に汗をかき、共に育つ(鹿児島県白鳩会の理念)」ことができる福祉サービスの経営形態である。

ただ、この新しい事業で成功例が多く生まれるためには制度上の課題もある。
ひとつは雇用できる健常者の枠に一定の条件が課せられていることだ。本来、障害者と共に働く健常者が多いほうが望ましく、20%程度の枠組みは撤廃したほうが望ましい。
次に、利用することができる障害者について「雇用契約に基づく就労が可能な者」という制限を設けていること。確かにに可能性というだけなら誰でも可能性があるのかもしれないが、そこにいっしょにいていっしょに働きたいという障害者のニーズがある場合に、雇用契約の可能性という尺度で判別されることは問題が生じよう。

いずれにしても、この事業は、これまでの授産施設の問題点を乗り越える可能性をもった事業である。この事業を障害者の日中活動の中心的な存在に押し上げることができるよう、われわれ自身の努力が問われている。