■児童の専門療育機関に手厚い制度を

スキナー財団の理事長である J. ヴァーガス博士が来日し、名東福祉会の通所厚生施設「はまなす」を見学したとき、彼女とディスカッションをする機会を得た。

 博士によると、自閉症のこどもについて2歳までに行動療法を実施した研究があった。そのうち57%もの症例で就学時に他の親が自閉症であると気づかなくなるまで改善をしたという。他の療法では同様のレベルまでに改善した事例は13%にとどまった。

 確かに、アメリカにおいてはADHAやLDの幼児の治療教育法が確立している。ところが日本では保育所が自閉症を受け入れるようにようやくなったという段階である。日米の幼児療育の技術レベルの差は歴然としている。

 この格差は幼児期の療育サービスの品質にとどまらない。早い段階で適切なコミュニケーション能力を身につけることができることにより、その後の行動障害など「二次的な」障害を未然に防ぐことが可能となる。

 障害者自立支援法の「目玉」である児童デイサービス事業。この事業は障害者自立支援法の施行に伴い、これまでの児童通園施設に代わる新しい障害児の療育事業として注目を集めている。

 ただ、障害者自立支援法における児童デイサービスではこうした専門的な療育サービスを想定して制度設計されているとはいいがたい。

 例えば、障害があるこどもの「預かり保育」的なサービスも、行動分析技法を有する高い技術を持ったスタッフも同様の報酬単価となっているのはいかがなものか。自閉症や広汎性発達障害の場合、独特の感覚チャンネルによって情報処理している可能性があり、個々のこどもの状態にあわせた専門的な言語訓練や日常生活動作の訓練が必要となる。効果をあげている療育技法には報酬に差をつけてもよいのではないだろうか。

 一方、発達障害に対する治療をうたったクリニックは近年、増加しつつある。なかには高額な報酬が必要なものもあり、1回数万円もする治療費に加え、新幹線代を払って通い続ける親もいる。「障害が治療できれば」という親心につけみ、まったく効果がない「治療法」を押し付ける事業者があるとしたら社会的に許されるものではない。

 早期の療育が児童期や青年期の行動障害の予防につながる可能性が示されている今日、児童デイサービスの療育効果についてもその効果を公表したり、公的な機関による評価を実施すべきであろう。