忍是佛心

「お時間があったらお茶の会をしますから来てください。」
とレジデンス日進家族会のお母さん達からお誘いがありましたので、私は喜んで出席させていただきました。今日はお掃除の日だから各ユニットでゴトゴト音がしているなと思っていたら、自分の子どものユニットが終わったところから順次お茶会をやるそうです。

 お番茶とかコーヒーなどを持ち寄りのお菓子で頂くくらいに思って何気なく和室に入りましたところ、驚いてしまいました。床の間と見立てた壁に「忍是佛心」の掛け軸がかかり、山茶花が一輪みごとに生けてあります。赤い毛氈-実は木綿の布にお客様がずらりと並んでお抹茶を頂いています。

 私が座ると、珍しい「なす丸ごと砂糖漬け」の和菓子が出ました。やおら懐紙を取り出して小さなペテナスぐらいのなすを丸ごと頂戴いたしました。お菓子の由来をお聞きした上、ゆっくりと味わい、いよいよお抹茶です。無農薬で栽培された新茶、お手前も見事ならお茶のおいしかったことといったら!
「良いおふくでございます。」
とご挨拶をしたところ一同ワハハハと大笑いしました。とても満足でした。

その後、掛け軸を指して
「これは何と読むのでしょう」
と質問されたので、事のいきさつを説明させていただきました。

 忍是佛心-耐え忍ぶこと是、ほとけの心とでもいいましょうか。私は年に一度京都の観修寺と大石順教尼ゆかりの無心庵、可笑案、仏光院におじゃまいたします。今は全教尼が居られ、順教尼やそのほか諸々の心にしみるお話をお聞きいたします。

 大石順教尼はもと京都の芸妓でしたが、父親に両手を切り落とされ、何もできないと嘆き悲しんでいる時、カナリアを見てこんな小さな鳥でも歌い子どもを育てることができるのだと感じ入り、佛道に入って絵や書も口で書くようになりました。そのことを聞きつけて無心庵を訪ねてくる身体障害者のお世話もするようになり、無心庵、可笑庵、仏光院と建てて行かれました。

 ずっと全教先生が順教尼亡き後守ってこられましたが、このたび年齢も高くなり、故郷へお帰りになりました。私ももう行くことができるかどうかわかりませんが、でも頂いた数々の色紙や本の中で全教先生を偲び、順境先生のお徳を心としたいものです。京都山科に近く観修寺、仏光院、無心庵、可光庵とめぐるのも心が洗われるものです。

2009年1月22日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝