仮想通貨「メイト」の実践

名東福祉会に対するボランティア活動の報酬にメイトという仮想通貨を導入する事になりました。ボランティアをしていただいたら、「メイト」という仮想通貨でお礼をしようというものです。

メイトで購入できる商品は、地域の人たちから寄贈していただいた雑貨や、利用者が日常生活で消費するものです。施設で制作した陶芸製品などもメイトで「購入」できるようにしたいと思います。

もちろん、無償で行うのがボランティアですし、ボランティア活動によって得られる満足感や充足感がそもそも報酬であるというのは私自身もボランティア活動をした経験から感じるところです。

でも、ボランティアを受ける側からすれば、ささやかであっても、なんらかのお礼をしたいというのが本当のところです。もしボランティアさんの活動に対する感謝が、これまで以上に法人職員間で共有できれば、ボランティアの方にもよりいっそうのやりがいにもつながるのではないかと期待しています。

仮想通貨「メイト」を構想しているなかで、利用者の社会貢献活動にもメイトを支払うことが検討されています。

就労支援施設では収益を目標とした作業を行っていますが、なかなか「やりがい」を感じるだけの収入にはつながっていないのが現状です。名東福祉会の場合、30年に及ぶ工賃作業の歴史がありますが、その生産性は低く、利用者の収入になかなかつながっていないという現状があります。

これまでどおり、利用者の収入を上げることに努力を続ける事は当然としても、なかなか打開策が見いだせません。特に、海外で清算する低価格の製品が容易に手に入る現状では、競争に勝ちうる自主製品を知的障害者施設で製作していく事はこれからも困難を伴うと思います。

一方、工賃作業にはもうひとつの側面である「人の役に立つ喜び」があります。
人の役に立って感謝されたり、ボランティア活動に感謝することが人々の生活の質を高めるのであるとすれば、私たちは単純に「利益がある・なし」ではなく、「地域社会への貢献」という観点から施設活動を見直す必要があるように思います。

人への貢献によって仮想通貨を得て、また人から奉仕していただくために仮想通貨を使用していきたいと思います。そして、その貢献活動の輪が徐々に施設と地域の間に広がっていけば、本当の通貨である「円」は稼げなくともそれ以上に利用者の生活の質は高まっていくのではないでしょうか。

まずはボランティアのみなさんに喜んでいただけるような商品構成、利用者の方に楽しんでいただけるような商品構成は何かを、利用者、家族、職員、ボランティアのみなさんが知恵を出し合って考えていただければと思います。

人の役に立つ事をプログラムに取り入れる

ポジティブ心理学という心理学があります。認知心理学の一種で、アメリカ心理学ではかなりメジャーです。

アメリカ心理学は、はじめはフロイトを起点とする精神分析から始まり、その後スキナーらの行動主義が全盛期を向かえ、その限界を克服する形で、近年では認知心理学や認知行動療法にその中心が移っています。

1998年からアメリカ心理学会会長を勤めたペンシルバニア大学のマーティン・セリグマンはこのポジティブ心理学の創設者です。

ポジティブ心理学を応用したうつ病の治療は、薬物療法以上の効果をあげているというエビデンスが多数あります。

セリグマンやクリストファー・ピーターソンの本を読むと(翻訳本ですが)、幸せになるために必要な条件について研究を行っています。

どこかへ行きたいとか、楽しい事をしたいとか、
面白い映画を見るとか、何か欲しい物を手に入れるとか・・・も、確かに幸せにはなるのですが、
その幸せは長続きしません。

それに比べ、

楽観的であること
前向きであること
人に感謝すること
他の人に親切にすること
自分の強みを生かすこと
他の人に多くを与えること
家族や友人と一緒に過ごすこと
何か没頭できることを持つこと

といった事が幸福感には極めて重要なんだそうです。健康で長生きするそうです。

ボランティア活動も、利用者にとってとても助かるだけではなく、ボランティアをすること自体が幸せで、満たされるあることから長続きします。

障害がある人のQOLを考えるとき、生活介護施設のプログラムも「その人の強みを生かして人の役に立つ事」による幸福感をもとに、考え直していく必要があると思います。