派遣切りの問題も色あせて・・・

「派遣切り」の問題もそろそろ収束しつつある。あれだけ騒いだのに、マスコミは勝手なものだ。雇用全体の2.6%しかいない派遣社員の問題を改革論と結びつけて社会問題化することがもともとおかしい。レベルの低い単純化された議論の化けの皮がはがれてきたということか。

社会福祉施設における雇用の問題は人手不足。正社員として人材を求めれば募集が多くなるかというとそうはならない。一般雇用の3分の2に満たない給料しか払えない現実を改善することが先決だ。

有資格者に報酬加算の話が云々されているが社会福祉士の資格は基礎知識にすぎず、より高度な技術について国は評価しなければ安易な資格取得競争に陥るだけだ。そもそも、生活支援分野は多様な技能の組み合わせが必要で、机上の知識ではかる国家資格は優良な福祉サービスを提供するための尺度として妥当性がない。職員の報酬単価全体の底上げを望む。

社会福祉の現場は24時間体制。パート、日勤のみ、24時間交代制など、多様な勤務形態がある。それに伴い、多様な雇用形態を認めないと地域の人的資源が生かせない。当方人では優秀な専門職人材がパート人材だという事例もある。地域の多様な人的資源を有効に生かして初めて効率的で実りある福祉サービスが成り立つ。

名東福祉会はすでに正規・非正規を問わず、同一の評価基準と給与表に従った賃金体系に移行している。同一賃金・同一労働を目指し、正規・非正規の格差をなくし、最終的には全て正職員化することが目標だ。ただその際に、多様な雇用形態を認めることは維持する必要がある。多様な雇用形態は多様で豊かな社会福祉サービスを無理なく提供する上で必須の条件であるためだ。

もちろんがんばってもがんばらなくても同じ賃金ということではモラルハザードが起こる。がんばっている人に手厚い評価方法が必要なことはいうまでもない。

ただ、職員全員が納得できる体系をつくり、その体系にしたがって妥当な評価をすることは難しい。リアルな勤務体制に即して常に改善することが求められる。

忍是佛心

「お時間があったらお茶の会をしますから来てください。」
とレジデンス日進家族会のお母さん達からお誘いがありましたので、私は喜んで出席させていただきました。今日はお掃除の日だから各ユニットでゴトゴト音がしているなと思っていたら、自分の子どものユニットが終わったところから順次お茶会をやるそうです。

 お番茶とかコーヒーなどを持ち寄りのお菓子で頂くくらいに思って何気なく和室に入りましたところ、驚いてしまいました。床の間と見立てた壁に「忍是佛心」の掛け軸がかかり、山茶花が一輪みごとに生けてあります。赤い毛氈-実は木綿の布にお客様がずらりと並んでお抹茶を頂いています。

 私が座ると、珍しい「なす丸ごと砂糖漬け」の和菓子が出ました。やおら懐紙を取り出して小さなペテナスぐらいのなすを丸ごと頂戴いたしました。お菓子の由来をお聞きした上、ゆっくりと味わい、いよいよお抹茶です。無農薬で栽培された新茶、お手前も見事ならお茶のおいしかったことといったら!
「良いおふくでございます。」
とご挨拶をしたところ一同ワハハハと大笑いしました。とても満足でした。

その後、掛け軸を指して
「これは何と読むのでしょう」
と質問されたので、事のいきさつを説明させていただきました。

 忍是佛心-耐え忍ぶこと是、ほとけの心とでもいいましょうか。私は年に一度京都の観修寺と大石順教尼ゆかりの無心庵、可笑案、仏光院におじゃまいたします。今は全教尼が居られ、順教尼やそのほか諸々の心にしみるお話をお聞きいたします。

 大石順教尼はもと京都の芸妓でしたが、父親に両手を切り落とされ、何もできないと嘆き悲しんでいる時、カナリアを見てこんな小さな鳥でも歌い子どもを育てることができるのだと感じ入り、佛道に入って絵や書も口で書くようになりました。そのことを聞きつけて無心庵を訪ねてくる身体障害者のお世話もするようになり、無心庵、可笑庵、仏光院と建てて行かれました。

 ずっと全教先生が順教尼亡き後守ってこられましたが、このたび年齢も高くなり、故郷へお帰りになりました。私ももう行くことができるかどうかわかりませんが、でも頂いた数々の色紙や本の中で全教先生を偲び、順境先生のお徳を心としたいものです。京都山科に近く観修寺、仏光院、無心庵、可光庵とめぐるのも心が洗われるものです。

2009年1月22日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

今の日本の繁栄を築いてくれたのは高齢者の方です。私は日本を築いてくださった先人達の努力にも感謝し、先祖の墓参りにも行きますし、近くの神社にも参ります。

ただ、私たちの国の高齢者が高齢者医療費制度の問題で「高齢者に死ねというのか!」とシュプレヒコールを上げるのを見て、これまでの先人は国を築くためにそのような行動をとったのだろうかと考え込んでしまいます。
先人達は自らを犠牲にしてこの国の若い命を護るために戦ったのではないか、そうした千年を超えるの歴史の中で今の日本があるのではないかと思うのです。

一方で、厳しい金融情勢の中で、会社の資金繰りのためにある銀行に融資の相談に行けば、わずか数分の間に数組の高齢者のご夫婦が一人1000万円の札束を持ち、列をなして新規の口座を開設している光景に出くわします。もちろんそれが虎の子の財産を護るためのペイオフ対策であることはわかりますが・・・。

国会議員の1票の格差は最大5倍。地方に若い人が少なくなり、都市に若い人が集中していき若い人の一票の重みは薄れていきます。反面、地方の若い人が政治の不公平を是正するために選挙で投票しようにも、どうしても高齢者が有利な選挙結果になります。

日本の安心と安全のために未来を変えるには、高齢者福祉や高齢者医療に偏った資源配分を若い人たちの安心と安全と未来のために使うことなのではないでしょうか。

そうしたダイナミックな改革を行うことにより、高齢者の生活もまた高齢者の知恵が生かせる、生き生きとした暮らしになるのではないかと思うのです。

新体系への移行が進まない

新体系への移行がなかなか進んでいない。
ここにきて障害者自立支援法のゆくへに対する関心が障害者関係施設にも政治の世界にもともに薄れてしまっていることがある。
見直しの時期も迫っているため、いまいちど問題点を整理して前に進むべきだ。

新体系へ移行していかない理由として、問題点が大きく分けて3つある。
第一に人材の確保の問題だ。報酬単価が低く、経営に汲々としている状況で人材が集まらないのは当然だ。報酬を改善しなければならない。
第二に新体系へのインセンティブ不足が揚げられる。旧体系の方が経営が安定しているのでは誰も急いで移行しようとはしない。
第三に「地域生活相談事業」の遅れがある。
そもそも新体系は地域生活を基盤とする障害福祉のグランドデザインをもとに設計された制度だ。
これを実現するためには最適な地域生活をコーディネートするための相談支援のしくみが不可欠だ。

人材確保についてはまず障害関係の職員の平均給与を上げなければ難しいだろう。
厚生労働省が平成20年度全国の5000箇所の障害関係の事業所の給与を調査した。その結果、職員の平均給与は3385000円だった。
これを全職種の平均に近づけていくことが必要だ。
同時に、正職員と非正規職員そのもの壁をなくすこと、
職員の能力評価に基づいた給与体系の開発すること
職員のキャリアパスを形成するための研修制度や技術開発
など経営者の努力も必要だ。
もちろんそうした努力に正しい評価やインセンティブを地方自治体が行うことも必要となる。

新体系へのインセンティブを強化しなければならない。なかでも報酬単価設定の低さは決定的だ。とはいえ、すべての報酬をスライド式に上げるのではなく、地域移行に向けてメリハリのある報酬アップが望まれる。なかでも
1 重度障害のケアに対する報酬
2 療育型児童デイサービスに対する報酬
3 ホームヘルプやケアホームなどの生活支援に対する報酬
の改善は必須だ。

日割り報酬に対する批判がわれわれ施設経営者からも強いが、これはかえって堅持すべきではないか。新体系への移行を進めるためには障害者自身が自由に必要なサービスを選択する概念が必須であり、それはとりもなおさず日割り報酬に結びつく。
合わせてケアホームなどのハードとしての住まいの確保について抜本的な対策が望まれる。

就労支援の促進のためには未曾有の不景気の対策も合わせて福祉施設の農業連携を進める政策も必要だ。
鹿児島県の白鳩会では農業法人を設立して地域ぐるみの雇用と障害者就労支援の両立を実現している。この活動にヒントがある。
愛知県でも安城の施設「ハルナ」がハウスにおける農業作業の請負を行うそうだ。今後の展開に注目したい。

相談事業の遅れは致命的だ。
地域における拠点を整備し、自立支援協議会を育てる政策が必要だ。そのためには自治体直営の協議会ではなく、中立的な民間活力を育てることが大切だ。相談支援の充実のために、自治体の役割は正しい実践に対して正しい監査と評価を行うことだ。

これまで多くの犠牲を払って進めてきた障害者自立支援。ここで後退してこれまでの努力が水泡に帰してしまう愚は避けなければならない。

天白ワークス家族会

おそまきながら明けましておめでとうございます。

天皇陛下からの御下賜金の報告をしてから年末年始は多忙でございました。

とりわけ私の長男が帰省でこの間、私の元へ帰っておりました。今年は私が数えで81歳、長男は59歳となります。体力的にも自分の齢(よわい)を痛切に感じ、年老いた息子の介護のあり方を早急に考えなければならないと思いました。

1月6日は久しぶりに天白家族会の新年会に出席させていただくことができ、何人かの懐かしいお母様方をはじめとして、元気なお母様方とお話をすることができました。それはそれは和やかな雰囲気でした。

中村署長のもろもろの報告から、よく天白ワークスの活動等が理解できましたし、そのあと山田本部長からケアホームの報告をはじめ、今後の方針等が説明されました。
お母様方はフンフンとうなづいたり、明るい顔で笑ったり、30年近い年月がたっても子を思う母の心は同じだなあと感じました。

初期の天白ワークスは大変な毎日が続いたことなどが懐かしく思い出されました。
当時、名古屋の養護学校を卒業した重症な自閉症の人たちが数多く一度に天白ワークスに通所されはじめました。これまでの常識では通用しない通所施設の過ごし方を考えなければなりませんでした。
私が天白ワークス所長だった時代には利用者について散歩に行ったこともありました。

みなさんに話をしていましたがやっぱりこれからのことも考えて頂かねばならず、老老介護の新しい方法を編み出したいものですね。
もっともっと話をしていたかったのですが、私の予定があり、部長や所長と一緒に早めに帰ってきてしまったことをお詫び申し上げます。

2009年1月10日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

チャレンジ精神で乗り切ろう

2008年日本を襲った不景気の嵐に際して、私たち社会福祉現場の人間も変わっていく必要があると思います。
やはりここは「チャレンジ精神」が旺盛な社会福祉法人が新しい福祉の現場を発掘すべきだと。

2000年代に入って以来、社会福祉法人に欠如してきたのはチャレンジ精神だと思います。
昨年度愛知県の経営者会議の事務局をさせていただき、施設経営者はリスクと変化を嫌うことをつくづく感じました。
障害者自立支援法は数々の問題がありますが、その問題の解消策として改革の反動ともいえるような余計な制度が生まれていきます。そのために社会福祉がますます硬直化してしまいます。

現在、派遣社員の問題がクローズアップされていますが、社会福祉の場合には事情が異なります。社会福祉サービス、とりわけ障害者福祉サービスにおいてはそもそも雇用調整は必要ありません。
社会福祉現場では巷でいわれるような派遣切りや契約解除は起こらないのです。

問題は福祉施設の職員の中にある格差です。社会福祉法人分野の雇用の問題は正社員の特権化をやめて差別のない労働条件契約をつくっていくことでしょう。
24時間いつでもどこでも利用者のニーズに答えるためにはボランティア、パートタイマー、契約社員、正社員の垣根を払う事が必要だと思います。
もちろん絶対的な資金が不足しているのでそれを解消しなければなりませんが、その前に経営者の姿勢が問われているのだと思います。
硬直的な社会福祉法人の数を増やしても利用者は幸せになりませんし職員の待遇も改善されません。

景気対策にもなり、社会福祉対策にもなる案として有望なのはやはり住宅問題でしょう。
欧米に比べて狭い住居を大きな住居にするような政策を立ててほしいと思います。小規模共同住宅やSOHO住宅、多世代共同住宅を設置しやすい制度です。
福祉サービス機能を設置している住居には積極的にインセンティブをつけて良質で孤立しない住環境づくりを応援するのです。そうすれば障害者のケアホームの問題は自然に解決に向かいます。

明けましておめでとうございます

日本は不景気の時代に入り、しばらくの間は地方自治体の財政難から知的障害者福祉についても相当厳しい状況が続くといわれています。でも、裏返して考えれば、私たちのような消費生活中心の事業には有利に働きます。輸入エネルギーや資材の原価が大幅に下がって行き、それに伴い物価についても安定していくでしょう。

昨年、焼き菓子の店「ロト」ができました。とてもおいしいクッキーを作っています。今年はさらに充実した地域の活動が期待できそうです。

今年は新しいケアホームができます。なかなか感じのいいケアホームになります。
レジデンス日進で生活する人たちも入れ替わります。これまでと同様、既存の施設のイメージをどんどん打ち破って楽しい生活の場にしていけたらと願っています。
日中活動について、仕事と遊びの双方についていっそう充実したものにしていきたいと思います。
相談事業について、名古屋市の期待に応えられるようもう一段の工夫を凝らして行きたいと思います。
昨年、行動療育センターは大きな成果を上げました。今年は名古屋方面での展開の可能性について探って行きたいと思います。

名東福祉会は家族会と一体感があります。
この一体感は職員のがんばりと家族の協力があってこそ成り立つものです。

厳しい労働環境と待遇の中で名東福祉会の職員諸君はがんばってきました。
失敗しても臆せず改善しあい支えあう雰囲気、誰も見ていない場所でもゆったりじっくりと利用者に接していく心意気。
去っていった職員の背中を目で追いながら、目の前の利用者を見て自分は辞めることはできないと思いとどまり、介護を続ける勇気と使命観。そうした行動は私を含め、利用者の傍らで生活していない人の百のことば、千の主張に勝る価値があります。

願わくばこの厳しい社会情勢を100年に1度の<チャンス>と考え、職員諸君の心意気に応えることを今年の目標としたいと思います。